「息子はこの交差点を横断中、飲酒運転の車に衝突され、一瞬のうちに40メートルもはね飛ばされました。病院で対面したとき、頭がい骨は大きく陥没し、いたるところから血が流れ出て、まさに地獄絵図のようでした。通りなれた道を、まさか無灯火の車が猛スピードで逆走してくるなんて、想像すらできなかったと思います」 名古屋城から東へ約1キロの場所にある「清水三丁目」という名の小さな交差点。その一角にある石造りの建物には、昭和33年製のレトロな市電の先頭部分が埋め込まれており、行先表示器には『交通安全』という文字が掲げられています。 近所に住む眞野哲さん(60)は、その前に佇み、横断歩道を見つめながら語ります。 長男の貴仁さんが渡り切れなかった横断歩道に立つ父の眞野哲さん(筆者撮影) 「あの日から、今年で11年目を迎えます。でも、まだ私の中では何ひとつ終わっていません。7年の刑を終えて出所した加害者は、息子へ