久々にヴィルヘルム・フルトヴェングラーによるベルリンフィルの演奏で「運命」を再び聞いてみると、想像以上に素晴らしい演奏です。クラウディオ・アバドにベートーヴェンを振るのは10年早い、とでも言わんがばかり。私はアバドは好きだったんですが、フルトヴェングラーを聞き直すと、フルトヴェングラーの演奏に遠く及ばないことを感じてしまったのです。ドイツのグラモフォンのCDで、演奏時期を見ると、1943年6月30日とありました。まさに第二次大戦中、ナチズムの最中です。ユダヤ人たちが最終解決で殺されていた時期です。 フルトヴェングラーはユダヤ人がホロコーストで虐殺され、オーケストラからもユダヤ系の音楽家たちが亡命したり、演奏ができなくなったりする中で、一人自分だけは他人の不幸におかまいなしに素晴らしい音楽を続けていた、ということで戦後に非難を浴びたこともありました。この時期、指揮者のブルーノ・ワルターを始め