ただ黙っていることが 今のあたしにできること 歩くことが不自由だったのにチビは歩くことが好きでした。 ちょっとの段差にもつまずき転び、泣いてしまうのに何かが呼んでいる気がして。 鳥もおひさまも自転車のベルも、ブランコが軋む音さえも自分に話しかけているような気持ちになりました。 チビには兄弟がいませんでした。 おうちには優しいおかあさんがいましたが、身体が弱くいつも眠っていました。 チビの住んでいる所は格子戸が多く、窓の位置も低かったから背が低くても家の中が見えました。 「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」 目が合えば、それが知らない人でも外と家の中で挨拶をします。 近所のおじさん、おばさんはチビを見かけるといつも声をかけてお菓子やみかんをくれます。 チビはそれをおかあさんの作ってくれた釣りズボンの大きなポケットに入れて公園に行きました。 少し暖かくなってきた頃でした。 ひなた