猫猫先生こと、小谷野敦氏の「小説」をはじめて読んだ。ネット上では悪意あふれる評価がくだされているのが目につく先生ではあるが、この小説に関しては結構好意的な記述が多い様な気がする。 実際、こんなに面白い小説を読んだのは久しぶりである。内容は「樋口一葉が夭折せずに天寿を全うした」世界を舞台にした、言うならばパラレルワールドもの。修士論文のテーマに、文学史の屑かごに埋もれてしまった樋口一葉=山室なつ子を選んだ女子大学院生の日常記述を軸に、一葉の日記の現代語訳などを巧みに配置した内容である。 樋口一葉など読んだこともないので、その評価をめぐる様々な議論なんかが中心になっていたらちょっと困ったろうが、話はもっぱら「たけくらべ」を書いたとき、一葉は処女だったかどうかとか、過去のブンガクがセックスをどう記述していたのか、というような素朴な疑問を、かなりのオクテとして設定されている主人公が読み解く話になっ