中世の日本の文学に関して、あるいは美術に関しても、さらには社会史・歴史に関しても、通り一遍の知識しか持っていない。 この稿で覚え書きとして記しておきたいのは、このところ気にかかってしかたない疑問に関してである。 追々解決して行ければといい、という目論見にすぎない。 最初に疑問がわいたのは、『信貴山縁起』に関してである。 言うまでもなく説話絵巻の代表作であり、その絵画の素晴らしさと独自性は、群を抜いている。 無論、国宝である。 しかしながら、この絵巻は、誰に、どのように読まれてきたのだろうか? まず、『絵巻』一般の読まれ方を考えてみなくてはならない。 武者小路穣は、『絵巻の歴史』の中で『信貴山縁起』について以下のように述べている。 紙を横につないだ巻子の長さと、それを少しずつくりひろげていくという観賞法をこれほどまでに効果的に利用して、しだいに転換していく舞台の上で自由に登場人物を活動させ、
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