テクストを読み込んで仕掛けを探り、YouTubeの動画で再現しつつ見直してみると、報道では椿事扱いされた例の「大統領を相手に、ウソつき呼ばわり」の不規則発言まで、出るべくして出るようきちんと伏線を張っていたことが明瞭となる。周到に用意された、スピーチライティングの勝利だった。 太平洋の此岸、東京でも、あたかも新政権が誕生した。ところが官僚主導を排すというそのお題目も、言葉を誰が紡ぐのかに目配りしない限り文字通りおめでたい題目に終わる。そこらへん、鳩山民主党は分かっているだろうか。 「勝利」を至上命題とした演説 9月9日、米国東部時間のプライムタイムを選んで連邦上下両院合同会議を開かせたオバマ氏は、慣例破りのスピーチをしに出かけた。 大統領が議会に出向いて演説をするのは年頭教書の時だけだというのが、長年のしきたりである。これを破ったオバマ氏は、医療保険改革を巡る出口の見えない膠着を、弁舌一本