マッスル坂井という男がいる。というか、いた。 「マッスル」というプロレス団体を率い、00年代にどん詰りに陥っていたプロレス界に本当に1本だけの光を灯した異才、というか天才だ。 自分がプロレスを観始めたのは11歳の時。はっきり覚えていて、橋本真也とトニー・ホームというプロボクサー(後にプロではなかったことを知る。笑)の異種格闘技戦からだ。なんで橋本が修行僧のようなかっこうして入ってくるんだとか、そもそもなんでプロボクサーとレスラーが試合するんだとか頭はパニックだったけど、とりあえずすげぇカッコよかったのだ。 それからはビデオで漁りに漁り、昭和プロレス史をさかのぼり、革命戦士とドラゴンの勇姿に涙する日々。「メタリカ」と「ふしぎの海のナディア」と「プロレス」が好きな10代。ま、当然友達はいない。いたけど、壁を作っていたというか、見下していたというか。正直、嫌なやつだったと思う。 それから10年経