それは月曜日午前9時30分に突然やってきた。部長の5人目の実母が亡くなったり(部長申告)、部長宅前でタンクローリーが大破炎上(部長申告)したおかげで延期に次ぐ延期になっていた月次定例営業会議のことだ。陽の当たらない会議室の明かりを点けると、蛍光灯の一本が切れかかって点滅していた。不定期に訪れる点滅が冴えない面子の顔に僅かに残っていたビジネスマンとしての精悍さを削り落とした。会社の景気を反映するようにテーブルに並ぶ顔はどれも重苦しい。例外を一人発見。部長。浅黒くゴルフ焼けしているその顔の中心で口が開く。わざとらしく重々しい口調で。「えー定刻になりましたので…」急に始まった会議に定刻なんてあるわけないだろう。そんな軽口を抑えて僕は慌ててペンをとる。 書記に就いて三年間で僕がローマ字入力で作成した議事録は、バインダーとしてその生を全うしようとしている部長のデル製ノートPCに挟まれ、小さな、モノト