筆者は以前、欧州連合(EU)の中にギリシャの居場所はないと主張するEU高官――オーストリア人――に会ったことがある。 「ギリシャは文化的に欧州であるとは言えず、むしろ中東の一部だ」と彼は言った。「ギリシャの音楽を聴けば分かるだろう」と。 これに対してギリシャ人は、「プラトン、アリストテレス、それに(音楽の問題について言うなら)デミス・ルソスがいるではないか」と正当な反論を展開するかもしれない。しかし、先のオーストリア人の見解は突飛ではるが、EU域内に現実に存在する微妙な問題に触れた。 つまり、EUは経済的にも政治的にも、北部の中核勢力と、無責任な南端の国々に分裂しているという恐れである。 この南北分裂は、EUが旧ソ連ブロックの国々を受け入れて東方に拡大した時、一時的に重要性が薄れた。というのも、従来ギリシャやポルトガルなどに向けられていた偉そうな態度が、新規加盟国に向けられるように