2007年のことだ。オーストラリア、ミルデューラにある病院に到着したジュリー・マッケナさんは、ほとんど話すことができなかった。両腕と両脚は冷えて斑点が出ており、顔は紫色になりつつあった。 医師たちはすぐに、ジュリーさんの状態を敗血症性ショックと判断した。血流に入った細菌が、彼女を体内から攻撃していたのだ。抗生物質の投与を始めても紫色の範囲は広がり続け、臓器不全が起こり始めた。ついには、腕と脚の一部が黒く変色し始めた。 血中の菌を医師たちが特定できた頃には、ジュリーさんの入院は2週間以上に及んでいた。菌はカプノサイトファーガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)といい、健康なイヌやネコの唾液に一般的に含まれるものだった。 その時ようやく、ジュリーさんは思い出した。具合が悪くなる数週間前に、左足の甲を熱湯でやけどしたのだ。ひどいやけどではなく、飼っているフォックス