作家の甘糟りり子氏が、「ハラスメント社会」について考察するシリーズ。今回は、「奥さん」、「お母さん」、「おばさん」…といった呼びかけや「嫁」呼称問題について語る。 * * * 古い日本家屋で暮らしているので、修繕を含めた業者さんをよくお願いする。先日は、役所から派遣された三人のシニアがうちにやって来た。初めてお会いする方々だ。もちろん対応するのは私で、名前を名乗って挨拶をしたのだが、いきなりこういわれた。 「じゃあ奥さん、現場に案内してくれるかな?」 「もちろんです。でも、あのう、私、奥さんではないんですが」 「あ、そ」 現場を見て、どうやって対処するかを話し合う。 「そいでね、奥さん。ここはまずやってみてからでないと」 その人の言葉が終わり、私が話す番になった時、私はもう一度やんわりとこの家の奥さんではないと伝え、「甘糟です」といってから発言をした。それでも、三人はずーっと私のことを「奥
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