すごい本が出た。 いきなりであるが、この本の最後の文を紹介したい。 でも、その窮屈な型を破って、新しい型を生み出すサバイバーがきっと出てくる。私の語りの型は、誰かの生き延びるための道具となり、破壊され、新しい型の創造の糧になる日を待っている。(200ページ) この締めくくりの文に、この本の性格が表されている。性暴力のサバイバーである著者は、さまざまな本を読み、勉強し、考えることで生き延びてきた。血まみれになりながら知識を身につけてきたと言えるだろう。そして、彼女だけの創造する力を得てきた。引用のとおり、この本は著者の小松原さんが得た力を、また別の人に渡すために書かれた本である。 私が本の中で驚いた箇所がふたつある。ひとつは、読書のしかただ。文中に、ジャック・デリダの『言葉にのって』の「赦し」に関する部分を小松原さんが読んだときのエピソードが出てくる。小松原さんは、この部分を読んだとき、耐え