北陸新幹線の延伸区間、敦賀（福井県）―新大阪の詳細ルートを検討してきた国土交通省は7日、与党に3案を提示した。想定工期は最長約28年で、当初の15年から大幅に延びる。建設費は倍増し最大約3兆9千億円。今後の物価上昇で5兆円超に膨らむ可能性があるとした。各案は京都市に置く新駅の位置が異なる。与党は来年度の着工を目指し、年内にルートを選ぶ方針だ。 京都新駅の候補は、JR京都駅の①地下の東西②地下の南北③西約5キロのJR桂川駅近くの地下―とした。試算では、東西案は工期が約28年と最も長く、建設費は約3兆7千億円。南北案は建設費が約3兆9千億円と最大で、工期は約25年を見込む。桂川案は約26年、約3兆4千億円。 今後も年2％の物価上昇が続くと仮定すると、工期が長い東西案の建設費は約5兆3千億円に膨らみ、最大となる。建設費の一部は沿線自治体が拠出する仕組み。上振れするほど財政負担が増すため、支援策が

運転士の応募が来ないと、困ります－。名古屋市や近郊で路線バスや高速バスを運行する名鉄バス（名古屋市中村区）が、運転士の採用促進を図るため、グッズを製作した。本来、「とまります」と書かれたバスの降車ボタンをもじったキーホルダーで、ボタンを押すと上部の「こまります」という文字が光る。 バス業界では、今年4月から時間外労働の上限が「年960時間以下」に定められた影響で、もともと課題だった運転士不足がさらに加速すると懸念されている。減便や路線廃止も各地で増えており、暮らしに深刻な影響を及ぼす「2024年問題」の一つとされている。 同社では、18年度まで新卒、中途合わせて毎年100人以上を採用していたが、その後減少し、21年度は30人に。テレビCMを放送するなどして上向いてきてはいるが、「今はぎりぎり維持できているような状態」（名倉緒（はじめ）人事部長）。運転士の働き方に余裕を持たせ、サービスを強化

国土交通省紀勢国道事務所は1日、尾鷲市の国道42号沿いに、24時間利用できるトイレなどを備えた「尾鷲南パーキング」をオープンした。 普通車22台、障害者・高齢者ら向け1台の駐車スペースと、男女、オストメイト対応の多目的トイレがある。24キロにわたって休憩施設のない熊野尾鷲道路の尾鷲南インターチェンジから近く、25キロにわたって道の駅がない区間にあたる。バイクで訪れた同市中央町の北尾重春さん（60）は「トイレや車内での休憩に利用できて便利」と話した。 現在大型車区画などを工事中で、将来的には普通車39台、大型車9台を駐車できる予定。災害時の避難場所や道路の通行を確保する拠点としての利用も想定し、防災倉庫も建設する。（長尾祐樹）

各地で路線バスの運転手不足が深刻化し、廃止や減便が相次いでいる。2024年度からの残業規制強化が始まれば、事態が深刻化するのは必至。三重県桑名市や大分県別府市といった自治体やバス会社は、大型車両を運転できる消防士の再就職先としてあっせんしたり、女性の採用を進めたりと、あの手この手で取り組んでいる。 国土交通省によると、17年度は全国で約8万4千人の運転手がいたが、21年度は約7万4千人に減少。高齢化に加え、長時間労働の割に収入が低いことで敬遠されたとみられる。 金剛自動車（大阪府）は12月20日でバス事業の廃止を発表。各地のバス会社で便数を減らす動きが出ており、しわ寄せは住民生活に及ぶ。時間外労働の上限を年960時間とする残業規制が24年4月から始まれば、運転手を増やす必要があり、ダイヤの維持がさらに難しくなるのは避けられない。 自治体も手をこまねいているわけではない。三重県桑名市は、県内

三交不動産（津市）は、四日市市浜田町に建設中の「三交四日市駅前ビル（仮称）」が、国土交通省などが支援する建築物の性能評価システムで、利用者の健康や快適さの分野で最高位の「Sランク」を取得したと発表した。県内では初めて。 取得したのは「CASBEE（建築環境総合性能評価システム）－スマートウェルネスオフィス認証」。周辺の環境に配慮した設計や、複層ガラスの窓を多く設置することで開放感と断熱性を両立する計画が評価された。国の高い省エネルギー基準を満たした「ZEB　Ready（ゼブ・レディ）」の認証も取得し、心地よく働く環境も整備する。 同社の担当者は「バスターミナルや都市整備事業に調和した景観とにぎわいを創出したい」と話した。 ビルは高さ64メートルの鉄骨14階建て。1階が商業フロア、2～14階がオフィス賃貸。駐車場棟も設け、自走式で125台を収容する。今年2月に着工し、2025年春に開業予定。

清須市と岐阜県岐南町を結ぶ「名岐道路」の整備を求め、一宮市など近隣5市町でつくる「名岐道路整備促進期成同盟会」の総会が4日、一宮市役所尾西庁舎で開かれた。今秋に県や国に対して、早期事業化の要望を出すことを決めた。 同盟会は2015年から活動。一宮市と岐阜市、岐阜県各務原市、岐南町、笠松町の5自治体で組織する。毎年、早期の整備を求めて国土交通省などに要望を実施している。 総会では、同盟会の会長を務める一宮市の中野正康市長が「（名岐道路の整備により）岐阜県と愛知県の結び付きが、さらに強くなることを期待したい」とあいさつした。本年度の事業計画や予算案について、原案通り可決した。

名古屋港に五つあるコンテナターミナルを一元管理する「名古屋港統一ターミナルシステム（NUTS）」で障害が発生し、コンテナの搬出入ができなくなっている問題で、システムを管理運営する名古屋港運協会は5日、障害の原因は身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」への感染だったと明らかにした。協会からの相談を受け、愛知県警が捜査する。 6日午前8時半からコンテナの搬出入を再開させる方向で調整し、復旧作業を続けている。 協会によると、ウイルスに感染したパソコンで4日、英語の脅迫文がプリンターから自動的に印刷された。「金銭を払えば復旧させる」との趣旨と、ロシア拠点のハッカー犯罪集団「ロックビット3.0」の名前が記されていた。 ロックビットは世界最大級のハッカー犯罪集団。日本でも病院や大企業などを標的にした攻撃を繰り返しているとされる。 システム障害は4日午前6時半ごろ発生。コンテナを輸送するト

品川－大阪間を時速500キロ、1時間超で結ぶ予定のリニア中央新幹線。政府は東京と名古屋、大阪の3大都市間を高速輸送するリニア建設の旗振りをするが、東日本大震災の14年前に「原発震災」を警告した神戸大の石橋克彦名誉教授（地震学）は安全性に疑問を呈している。18日に予定されるリニア工事認可取り消し訴訟判決の前に、懸念されるリスクについて考えてみた。　（大杉はるか） 北品川非常口（東京都品川区）のリニアトンネル掘削現場。JR東海は5月半ば、中断していた掘削を1年2カ月ぶりに再開した。 近くに住む無職男性（66）が「リニア？　自分が生きている間には乗れないと思うよ」と語れば、会社員の50代女性も「あまり現実味が感じられないですね」。一方、プログラマーの男性（24）は「いつか乗ってみたい」と期待する。 北品川の中断は、掘削機シールドマシンの故障が原因。2020年10月の東京外郭環状道路（外環道）建設

リニア中央新幹線工事の工事計画が認可されて9年7カ月になるが、静岡県内区間はいまだ着工にこぎつけていない。きっかけは、2013年9月にJR東海が「トンネル工事で大井川の流量が毎秒2トン減少する」と明らかにしたこと。川勝平太知事は県外に流れ出る水の全量を戻すことを求め、同社の金子慎社長（当時）は18年10月、「全量戻し」を表明した。だが、その方法や環境保全対策などを巡って課題は山積。着工時期はまだ見通せていない。複雑化する議論の経緯を振り返る。　（塚田真裕） 「何も対策をしなければ大井川の流量が最大毎秒2トン減少する」と同社が明らかにしたことを受け、翌14年3月の知事意見では、県外流出する水全量を大井川に戻すように求めた。この時の環境大臣意見と国土交通省大臣意見でも、環境への配慮と地元理解の必要性が言及され、県は水資源と環境保全に関する議論の根拠の一つにしている。 同社は国の環境影響評価法の

国土交通省は25日、三菱重工業が事業撤退を決めた国産初のジェット旅客機スペースジェット（旧MRJ）4機の登録を抹消したと明らかにした。3月6日付。初号機を含み、これで全機が抹消された。 開発子会社の三菱航空機（愛知県豊山町）が「航空の用に供さないため」として抹消を届け出た。これまでに全5機が登録されており、うち1機は2022年3月に先行して抹消された。 一方、三菱航空機は25日、社名を「MSJ資産管理」に変更したと発表した。残された工場や機体をどうするかについて、株主のトヨタ自動車や三菱商事、住友商事などと協議し、清算に向けた手続きを進める。 ANAホールディングス（HD）は、三菱重工業が開発中止を決めたスペースジェット（旧MRJ）について、25機の購入契約を解除した。24日付。ANAHDは「納入遅れによる補償は既に受けている」として三菱重工に新たな補償は求めないとした。 ANAHD傘下の

働き方改革関連法により、2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設定されることで生じる諸問題、いわゆる物流の「2024年問題」。労働時間に罰則付きで上限が設定されるため、運送業者の収益減少、ドライバーの収入減少や離職、荷主の輸送コスト上昇など、さまざまな問題が生じる懸念がある。 国土交通省・経済産業省によれば、近年、電子商取引（EC）が急速に拡大し、21年に同市場の物販系分野は13．3兆円規模となり、宅配便取扱個数の増加は5年間で約9．3億個と2割強も増加している。筆者自身もコロナ禍以降、ネット通販で小型電子機器や身の回り品を気軽に購入する機会が格段に増えた。 両省では、この問題の一助とすべく、目標を定めて宅配便の再配達率の削減に取り組んでおり、時間帯指定の活用や各事業者提供のメール・アプリの活用などを推奨している。私たち消費者も、ネット通販などを利用する際

御嵩町で計画されているリニア中央新幹線トンネル工事の残土処分場の候補地が環境省が指定する「重要湿地」に位置している問題で、研究者らでつくる日本生態学会の自然保護専門委員会は27日、計画の見直しを求める要望書を町とJR東海に提出した。 候補地には、環境省のレッドリストで「絶滅危惧2類」に指定されているハナノキが生息。要望書では、貴重な動植物としてハナノキも含めて47種類を挙げ「全ての希少種に対し、十分な保全措置を実施することは困難」とし、開発候補地からの除外を訴えている。 この日は、自然保護専門委員会長を務める富山大の和田直也教授、ハナノキを研究している筑波大の佐伯いく代准教授が町役場を訪れ、要望書を担当課の職員に渡した。他に県、環境省、国土交通省にも送付した。 要望書を提出した後に県庁で会見した佐伯准教授は、ハナノキの生息数は岐阜、長野、愛知の各県の限られた湿地で約2000個体だと説明。「

揖斐川町東横山の道の駅星のふる里ふじはしで13日、低軌道周回衛星によるインターネットサービス「Starlink（スターリンク）」を使った実証実験があった。課題となっていた山間部の通信環境を整え、業務の効率化や災害時の迅速な情報伝達につなげる。 国土交通省がスターリンクを使用した実証実験をするのは初めて。スターリンクは高度550キロ程度の低軌道上にある多数の小型衛星ネットワークを活用するため、通信環境の整備が難しい山間部でも円滑な通信ができるようになる。 実証実験には、オンラインも含めて町職員や建設業者ら計約220人が参加。スターリンクを活用して工事用道路施工中の現場とオンラインでつなぎ、道路の寸法を遠隔で確認した。4Gなどがつながらない現場の実験もあった。 国交省中部地方整備局越美山系砂防事務所の神野祐一副所長（59）は「スターリンクは情報共有が円滑にできる手段。実験での課題を共有していき

国土交通省は6日、引っ越し大手5社から聞き取った今春の引っ越し予約状況を公表した。3月下旬を中心に混雑する一方、3月上中旬の平日や4月中旬以降は比較的余裕がある。担当者は「予約の分散を検討して」と呼びかけている。 予約の混雑は3月23日～4月3日に連続するなど、3月13日から4月8日まで断続的に続く。特に3月最終週末の25日は「非常に混雑」となっている。聞き取りは2月18日時点のため、以降に進学や転勤が決まり、新たな予約が立て込んでいる可能性もあるという。

半世紀ぶりの国産旅客機開発で世界市場に打って出る夢は幻に終わった。三菱重工業（東京）が7日に「スペースジェット（SJ）」事業からの撤退を表明した。開発を凍結したこの2年間は人員や設備を大幅に縮小し、再開は不可能に近い状態だった。航空機開発のノウハウが不足し、技術的な課題を最後まで乗り越えられずにさじを投げる格好となった。　（平井良信） 「大きなプロジェクトであり、そんなに簡単に結論が出せなかった」。三菱重工の泉沢清次社長は会見で、2020年10月に開発を凍結してから「撤退」の判断に時間がかかった理由を説明した。08年の事業開始から官民一体で1兆円もの費用を投じた一大国家プロジェクト。「どこかに突破口がないか模索していた」と悔しさをにじませた。 その一方、現場の開発体制は粛々と縮小を進めてきた。開発を担当する三菱航空機（愛知県豊山町）の人員は最盛期の20分の1以下に減らし、凍結前には年間10

日進市とソフトバンク子会社「ボードリー」、名鉄バス、名城大など産官学の6者でつくる「自動運転実装コンソーシアム（共同事業体）」は26日から、名鉄日進駅－市役所（往復約5.7キロ）間で自動運転電気バスの実証実験を始めた。市内を走るコミュニティバスや電車などと組み合わせ、利便性の高い公共交通の実現を目指す。2期に分けて、来月28日まで。　（平木友見子） 市によると、同様の実証実験は全国各地で行われているが、過疎地や代替交通機関のない場所が多いという。国内約170カ所で自動運転事業の実証実験などを手がけるボードリーにとっても、日進市のように人口が増え続けている地域での実施は初めて。佐治友基社長は「新しい運用方法が見つかるのではないか」と期待を寄せる。 自動運転技術のレベルは5段階に分かれる。高齢化が急速に進む中、政府は上から2番目の「レベル4」に当たる移動サービスについて2025年度をめどに全国

中部国際空港沖に整備中の土砂処分場の石材調達を巡る官製談合事件の背景に、短期間で業者を選び調達しようとした国土交通省中部地方整備局（中部地整）の方針が影響した可能性が浮上している。入札情報を漏らしたとして逮捕された中部地整名古屋港湾事務所の元所長は落札業者と親密な関係にあっただけでなく、早期の処分場着工に向けた方針を守ろうとしたことが動機の一つとなった可能性も出ている。愛知県警もこうした背景を把握し、経緯を調べている。 逮捕容疑では、処分場の護岸に使う石材を調達する入札で、元所長の藤田亨容疑者（61）が、「丸昇石材」（三重県尾鷲市）元会長、小倉章弘容疑者（65）に、予定価格算出の根拠となる石材の単価に近い価格を漏らして落札させたとされる。 捜査関係者によると、2人は2010～12年ごろに知り合い、頻繁に飲食するようになった。藤田容疑者は退職後、小倉容疑者が経営していた会社と顧問契約を結んだ

ヤマハ発動機は24日、ロシアからの攻撃により各地で大規模停電が発生しているウクライナに対し、国際協力機構（JICA）を通じて小型発電機215台を送ったと発表した。20日に現地に到着し、電力の供給などに役立てられるとみられる。 経団連などが呼び掛けている支援事業「ウクライナの人々に発電機を送る越冬支援イニシアティブJAPAN」に賛同した。送ったのは、キャンプ生活や事業所の非常用電源など、幅広い用途で利用できる出力1～21キロボルトアンペアの計10種類。ヤマハモーターパワープロダクツ（掛川市）などで製造した。 ヤマハ発動機は「ウクライナ危機で被害に遭われた方々へ心よりお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早く、平和で安全な世界が戻ることを願っています」とのコメントを出した。　（斎藤航輝）

リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡り、JR東海は25日の静岡県水資源専門部会で、地質や断層帯の位置を調べる県内での先進ボーリング調査は、湧水と同量を戻す対策が決まるまでは着手しないと県に歩み寄る姿勢を示した。一方、県境までは調査状況を静岡県に報告し、湧水量を管理した上で進めると表明したが、県は現状では進めないよう要請した。 県側は「実質的な水抜き工事」として県内での先進ボーリング調査に反対。大井川流域首長からも「対策とセット」との声もあり、JR側は方針を転換した。 県境までの先進ボーリング調査は対策を取った上で理解を求めたが、県の石川英寛政策推進担当部長は「掘る前に、県内の水資源に影響がないと判断する仕組みをつくり、確認したい」と求めた。ただ、山梨県内の調査を止める要請は「山梨県には伝えていない」と明かした。 JRの沢田尚夫・中央新幹線推進副本部長は会議後、「ボーリングの調査は静岡

熊野市紀和町の山間部で今月、日本郵便がドローンの配達実験を行っており、20日、その様子が報道陣に公開された。同社は2016年度から、実用化に向けて各地で実験を重ねており、東海地方では初となる。（長尾祐樹） ドローンは幅約1.1メートル、高さ65センチ。バッテリーで動き航続距離は10キロ、最高速度は時速36キロで、1.7キロまで積載できる。自動運転で制御され、非常時は人が操作することも可能。ACSL社（東京都江戸川区）が開発し、17年から日本郵便と連携して実験に取り組んでいる。 実験は同町木津呂地区で実施。市街地からは一本道で、配達を担う入鹿郵便局（同町板屋）から山道で6キロほどの距離にある。車では往復40分ほどかかるが、ドローンなら約15分に短縮できる。 この日は同地区の倉屋将昭さん（80）方に郵便物を届ける想定で、庭先に上部が開いた1メートル四方の専用ボックスを用意。内部に荷物を受け止め