「あっ、海だ!」。初めて訪れる旅先。小気味よく揺れる列車の車窓から、ふと海が見える。胸が高鳴り、水平線に目を奪われ、カメラを構えてしまう―――。そんな経験はないだろうか。 私も、旅先で出会う海の魅力にとりつかれた一人。しかし、車窓に流れる海では飽き足らず、心ゆくまで海を眺めていられる「駅」に降り立つことにした。旅のテーマはずばり「海の見える駅」。学業や仕事のかたわら、このテーマで15年間、一人旅を続けている。 これまでに訪れた駅は日本全国で300駅以上。島国である日本は、実は世界で6番目に海岸線の長い国であり、海の見える駅にあふれている。本連載では、数ある海の見える駅の中から特に印象深い駅を、訪問当時を回想しつつご紹介していきたい。 誰もいないホームから見る、有明海の朝焼け 2016年11月のある日、午前6時。朝食も食べぬまま、ほぼ空っぽの列車に揺られ、ひとり長崎県の小さな駅に降り立った。