過去は現在に作り変えられる―――嵐が丘、T.S.エリオットから、ガラスの仮面、童夢まで―――鴻巣友季子さん「円環する古典文学」講演会まとめ 鴻巣友季子さんとEve Zimmermanさんの講演&座談会を見てきた。 お二人とも日英両語に精通し、多岐にわたる翻訳書を上梓されている研究者だ。古典が新たな訳を得て、「新刊書」として世に出るときに「ねじれ」が生じる現象や、原作←→新訳が互いに及ぼす影響について、お二人が濃密に語り合う90分間だった。 現在が過去に及ぼす影響 最も興味深かったのは、文学における現在が過去に及ぼす影響の件だ。 「ん?逆じゃね?過去から現在への影響でしょ?」 わたしも同じことを感じた。過去は既に確定したもので、時は過去から現在に流れるものだ。従って「過去→現在」への影響はありこそすれ、「現在→過去」は無いだろうと思った。 ところが鴻巣さんは、「翻訳」と「翻案」を手がかりに、