なぜ昔ながらの下町の大衆酒場には「もつ煮込み」があるのか。ライターの石田哲大氏は「もつの中でも、消化器系の『白もの』は比較的安く手に入る。独特の臭みが気にならない食べ方として、みそやしょうゆで調味して煮込んだメニューを店が提供し、安くて栄養価が高いつまみとしてヒットしたのではないか」という——。 大衆酒場ともつ煮込みの切っても切れない関係 東京の下町である浅草の中心に位置する浅草寺。その西側に大衆酒場が密集している通りがある。通称「ホッピー通り」、まれに「煮込み通り」「煮込みストリート」などとも呼ばれる。道路の両側には、店先に椅子とテーブルを並べた気取らない居酒屋が軒を連ね、昼間から酔客でにぎわっている。いまでこそ若い世代の女性客も少なくないが、足立区千住で育った筆者の母親は、「昔はあの辺はガラが悪くて、女子供が行くような場所ではなかった」と話していた。 ホッピーも煮込みも、20年か30年