2015年夏、ヨーロッパに数十万人の難民がやってきました。最初はアフリカ系難民がイタリアに、次は主にシリア難民がギリシャに。いまにも沈みそうなボートで、運よく南ヨーロッパの海岸にたどり着いた人たちは、今度はドイツやスウェーデンを目指して、大移動を始めました。バルカン半島の田舎道に人があふれ、ターミナル駅では通勤客の横で難民が寝起きする姿が日常になりました。ヨーロッパ難民危機のはじまりです。 その頃、日本では、1枚のイラストが議論を巻き起こしていました。荒れ地を背景に、挑戦的な視線の少女が描かれ、「何の苦労もなく/生きたいように生きていきたい/他人の金で。/そうだ/難民しよう!」と書かれたイラストです。人権侵害だ、差別だといった批判が高まる一方で、表現の自由に基づく擁護論や、シリア難民は「なりすまし難民」だから描かれていることは本当だ、という議論が起こりました。 しかし、もし、そのイラストの