千吉さんの家の近所で、長いあいだ空き地だった土地に、エネルギー再生センターという施設が建設されることになりました。背丈ほどもあった草が刈りとられ、ぐるりを高い塀が囲ったと思ったら、トラックが連なってやってきます。 やがて、見上げるようなタワークレーンが3機、据えつけられました。 うなりをあげて働き始めたクレーンを、千吉さんは庭に出てながめました。 「まるで、恐竜のようだ」 縁側に向いたガラス戸越しに、部屋に居ながらにして見ることもできます。定年退職した後は気ままなひとり暮らしで、暇はあり余っていました。 妻の佳代さんは7年前、病気で先立っていきました。息子の比呂也は獣医師になり、野生動物を保護する仕事で海外へ渡ったきりです。 夜間には、タワークレーンの先端に航空障害灯が点きました。赤いライトが灯ると、ますます恐竜めいて見えます。地上に生き残った恐竜たちが、思い思いの方角を向いて、たたずんで