猫が飛び出してきたのだ。 その日、私たちは久しぶりに二人で晩御飯を食べに行った。その帰りの出来事だ。 人気ひとけも車っ気もない山中を走っていると、道路脇の茂みから突然猫が飛び出してきた。 ちょうど話題が尽きていたのでカミ子は運転に集中していただろうし、その猫が目につきやすい真っ白な猫だったおかげもあってか、どうにか轢き殺さなくて済んだ。 びっくりしたぁ。あっぶな……。小田ちゃん大丈夫? カミ子こそ大丈夫? と私たちはひとしきり驚きを口に出したりお互いを心配しあって、それでようやく落ち着いた。 急ブレーキと私たちの興奮が夜の中にすっかり吸い込まれると、山中はしんと不気味に静まり返る。ヘッドライトに照らされたアスファルト道を、一匹の虫がふらふらと飛んでいた。 深呼吸を一つして、カミ子は再び車を走らせた。 「あーびっくりした……」 よかった、と思った。私が運転していたら、もしかしたら猫を轢くか脇
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