「下流老人」という言葉がそこかしこで聞かれるようになった。ソーシャルワーカーの藤田孝典氏が著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)で提示した、生活レベルが著しく低い老人たちのことだ。 推定600万〜700万人の「下流老人」 著者は下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義している。下流老人の指標として3つの「ない」を挙げており、「収入が著しく少『ない』」、「十分な貯蓄が『ない』」、「頼れる人間がい『ない』」状態を指す。まったく論拠のない思い込みで生活保護受給者を蔑視してしまうのと同じようにして、生活がままならなくなった老人に「努力をすれば……」や「日頃の行いが……」といった雑な声をかけがちだ。しかし、本書が明らかにするのは、ギリギリの生活で生き抜いている姿がすっかり常態化している現実だ。 現在、推定600万〜700万人いるとされる下流老人は、これ