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  • 野口旭『アベノミクスが変えた日本経済』(ちくま新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月28 野口旭『アベノミクスが変えた日経済』(ちくま新書) 7点 カテゴリ:政治・経済 雇用の改善や株価の上昇をもたらしながら、物価目標が未達成となっているアベノミクス。安倍政権をめぐる党派的な対立が激しいこともあって、その評価は大きく割れているのが現状です。 著者はいわゆる「リフレ派」の一人とされる人物で、アベノミクスを評価する立場の人ですが、「日経済が縮小均衡に陥った責任の大部分は、明らかに民主党よりも自民党にあるといえる」(22p)と述べるなど、全体的に党派性をあまり感じさせない理論的な筆致で書かれています。 目次は以下の通り。 第1章 アベノミクスとは何だったのか 第2章 世界大不況とアベノミクス 第3章 異次元金融緩和政策の真実 第4章 雇用政策としてのアベノミクス 第5章 経済政策における緊縮と反繁縮 バブル崩壊以後、日は「失われた20年」ともいわれる経済の低迷に苦しみ

  • 高口康太『現代中国経営者列伝』(星海社新書) : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月8 高口康太『現代中国経営者列伝』(星海社新書) カテゴリ:社会採点せず 著者の高口康太氏よりご恵投いただきました。ありがとうございます。 (いただきものなので採点はなしです) 一昔前まで、中国経済や「メイド・イン・チャイナ」の勢いは感じながらも、中国の企業というとハイアールくらいしか思いつかないという状況でした。いわば中国経済というのは「顔の見えない」ものでした(2007年出版の丸川知雄『現代中国の産業』(中公新書)の「はじめに」には、「中国の会社を挙げてください」と言われてどれだけの人が答えられるだろうか、という記述がある)。 ところが、このでもとり上げられているアリババの馬雲(ジャック・マー)に代表されるように、ここ数年、中国の企業や経営者が「顔の見える」形で存在感を示し始めています。 そんなときにタイミングよく出版されたのがこの中国の代表的な経営者8人をとり上げて、その成

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    kinbricksnow
    kinbricksnow 2017/05/09
    あの山下ゆさんにレビューしていただきました。“この本で今の中国の企業と経営者をチェックしてみるのもいいかもしれません。中国経済の経済の可能性とバブル臭い部分の両方の面が見えてくる”
  • 川島真『中国のフロンティア』(岩波新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月11 川島真『中国のフロンティア』(岩波新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 中国外交史を専門とする著者が、現在の中国の外交の最前線を探るべくアフリカや東南アジアとの国境、東チモール、金門島(台湾中国大陸の間にある島)などを訪ね、国家間の外交だけではない中国の対外的な動きを考察した。2011年から2013年にかけての『UP』での連載がもとになっています。 中国政府というアクターだけではなく、相手国や地方政府などの動きを重層的に見ることで、一種の「運動体」としての中国を捉えようとしています。 目次は以下の通り。 序章 フロンティアから中国を考える 第1部 アフリカ中国人、中国アフリカ人 第1章 アフリカの「保定村」物語 第2章 広州のアフリカ人街 第3章 雑誌『非洲』の世界 第2部 マラウイはなぜ中国を選んだのか 第4章 マラウイと中国の国交正常化 第5章 マラウイと台湾の断交

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  • 金成隆一『ルポ トランプ王国』(岩波新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月27 金成隆一『ルポ トランプ王国』(岩波新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 朝日新聞で注目を集めたトランプ支持者へのルポの書籍化。 「いずれは失速する」と言われ続けたトランプですが、結局は共和党の予備選を制し、さらには選でも大命のヒラリー・クリントンを破りました。この原動力となった支持者の熱気と素顔を伝えてくれるです。 日では、ニューヨークやワシントンの東海岸、あるいはロサンゼルスやシアトルなどの西海岸発の記事が多いですが、その真ん中に広がるアメリカの現在の雰囲気も教えてくれます。 著者はニューヨーク駐在の記者ですが、周囲にトランプ支持者はほとんどいなかったといいます。実際、選でのトランプの得票率はニューヨークのマンハッタンで10%、ブロンクスで9.6%、ブルックリンで17.9%、ワシントンでは4.1%(ii p)。都市部からの票はほとんどなかったのです。 一方で、トラ

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  • 梶谷懐『日本と中国経済』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月26 梶谷懐『日中国経済』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 副題は「相互交流と衝突の100年」。著者は、中国の財政・金融といったマクロ経済の専門家ながら、今までも『「壁と卵」の現代中国論』、『日中国、「脱近代」の誘惑』といった著作で(両方とも面白いです)、中国の思想や政治文化、さらの日人の中国認識の問題などを論じてきた人物で、このでもそうした知見が十分に活かされています。 さらにこのは日中の経済交流を描くだけでなく、現代中国経済史としても読み応えのある内容になっています。同じちくま新書の岡隆司『近代中国史』(これも面白い)のつづきとも言えるかもしれません。 目次は以下の通り。 第一章 戦前の労使対立とナショナリズム 第二章 統一に向かう中国を日はどう理解したか 第三章 日中開戦と総力戦の果てに 第四章 毛沢東時代の揺れ動く日中関係 第五章 日中蜜月の

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  • 細谷雄一『安保論争』(ちくま新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月21 細谷雄一『安保論争』(ちくま新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 国際政治学や外交史を専門とし、『国際秩序』(中公新書)などの著作で知られる著者が、昨年夏に大きく盛り上がった安保論争について自らの論考をまとめたもの。 新聞や雑誌、ウェブメディなどに書いた記事を元にしているため、重複している部分もありますが、安保法制に賛成の立場から一貫した議論がなされています。 目次は以下の通り。 1 平和はいかにして可能か 2 歴史から安全保障を学ぶ 3 われわれはどのような世界を生きているのか―現代の安全保障環境 4 日の平和主義はどうあるべきか―安保法制を考える まず、著者は1992年の国連平和維持活動協力法の時の騒ぎを引き合いに出し、当時は「違憲だ」「平和主義を破壊する」と懸念されたが、25年近く経ってどうだったか? と問いかけます。 さらに安保法製の審議において、反対する陣営から「平

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  • 菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月27 菅野完『日会議の研究』(扶桑社新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 話題の書。とりあえずの全体の感想としては、著者の熱い思い入れが伝わってくるですけど、その「思い入れ」が「思い込み」に転化してしまっている部分もあるな、というものです。 ただ、著者が切り込んでいかなければ、「日会議」という組織についてきちんと検討しようとする機運も高まらなかったわけで、そうした意味で貴重な仕事と言えるでしょう。 Amazonのページにある書の紹介文は以下の通り。 「右傾化」の淵源はどこなのか? 「日会議」とは何なのか? 市民運動が嘲笑の対象にさえなった80年代以降の日で、めげずに、愚直に、地道に、 そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」がいた。 彼らは地道な運動を通し、「日会議」をフロント団体として政権に影響を与えるまでに至った。 そして今、彼らの運動が結実し

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  • 楊海英『日本陸軍とモンゴル』(中公新書) 5点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月15 楊海英『日陸軍とモンゴル』(中公新書) 5点 カテゴリ:歴史・宗教 副題は「興安軍官学校の知られざる戦い」。けれども、「モンゴル独立を目指したジョンジョールジャブの生涯」といった副題のほうが内容を表しているといえるでしょう。 満州国の成立を機に、内蒙古のモンゴル人たちは日の支援によって中国からの独立を夢見ますが、日にとってモンゴル人は日の勢力拡大のため協力すべき存在にすぎませんでした。 そんなモンゴル人の日への期待と幻滅、そして中華人民共和国の成立によってさらに民族の誇りを奪われてしまったモンゴル人の悲劇を描いたです。 著者は中国内の南モンゴルに生まれ、北京で日語を学び、1989年に来日して以来、日で暮らしている人物で、文化大革命におけるモンゴル人の虐殺を描いた『墓標なき草原』で司馬遼太郎賞を受賞しています。 非常にモンゴル民族への思い入れが深く、今の中国政府に

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  • 高口康太『なぜ、習近平は激怒したのか』(祥伝社新書) : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    9月5 高口康太『なぜ、習近平は激怒したのか』(祥伝社新書) カテゴリ:社会採点せず 著者の高口康太氏よりご恵投いただいました(いただきものなので採点はしないことにします)。 副題は「人気漫画家が亡命した理由」。中国版のTwitterである「微博(ウェイポー)」などで中国政治や社会を風刺する漫画を描いてきた辣椒(ラージャオ、名・王立銘)、2010年頃から風刺漫画をさかんに発表し中国のネット論壇を盛り上げた彼は2014年に中国の官製メディアから批判され、現在、事実上の亡命状態で日にいます。 そんな辣椒に、中国や新興国のニュースを配信するサイト「KINBRICKS NOW」を運営する著者がインタビューし、そこから中国のネット論壇の「生と死」、さらには習近平体制における中国社会の実情を探ろうとした。 人権派弁護士の大量拘束など、気味の悪いことが立て続けに起きている中国ですが、その「気味の

    高口康太『なぜ、習近平は激怒したのか』(祥伝社新書) : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期
    kinbricksnow
    kinbricksnow 2015/09/06
    丁寧なレビューをいただきました。感謝です
  • 小林健治『部落解放同盟「糾弾」史』(ちくま新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月21 小林健治『部落解放同盟「糾弾」史』(ちくま新書) 6点 カテゴリ:社会6点 著者は、解放出版社に勤務し、1980年から、部落解放同盟中央部マスコミ・文化対策部、糾弾闘争部の一員として、メディアにおける差別表現事件にとりくんだ人物。 そうしたプロフィールを持つ著者が、今までの「糾弾」の歴史を振り返り、その上で「部落解放同盟がなぜ弱体化したのか?」という問いに答えようとした。 「部落解放同盟がなぜ弱体化してしまったか?」という問いに対する踏み込みはややもの足りず、また、「糾弾」の歴史についても、きちんと時系列にそって書かれているわけではないため、「歴史」としてはややまとまりが見えにくいのですが、数多くの事例から見えてくる差別の構造やパターンといったものがあり、差別について考えさせるになっています。 「糾弾とは何か?」このでは次のように述べられています。 糾弾とは、まず何より

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  • 岡本隆司『袁世凱』(岩波新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月13 岡隆司『袁世凱』(岩波新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 『李鴻章』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)などの著作で知られる岡隆司による袁世凱の評伝。 袁世凱というと、多くの人にとって「辛亥革命を潰した男」、「皇帝になろうとして自滅した男」といったもので、良いイメージはないでしょう。著者も「あとがき」で「まだ若いころ、少し知って、嫌いになり、立ち入って調べていよいよ嫌いになった。蛇蝎ののように、とつけくわえてもよい」(217p)とまで述べています。 しかし、それでも袁世凱の歴史的な重要性というのは否定出来ないわけで、例えば、日史だけを見ていても、壬午軍乱、日清戦争の開戦、21ヵ条の要求など、節目節目でこの男が登場することになります。 そんな袁世凱の評伝なのですが、このが描こうとするのは袁世凱という人物というよりは、袁世凱が生きた時代ということになります。著者は、

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    kinbricksnow
    kinbricksnow 2015/03/16
    この本を読めば、例えば現在の中国の地方政府のあり様や、薄煕来の重慶市での「暴走」などもまた違った視点で見えてくると思います
  • 服部龍二『ドキュメント 歴史認識』(岩波新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月5 服部龍二『ドキュメント 歴史認識』(岩波新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 『広田弘毅』(中公新書)、『日中国交正常化』(中公新書)など、近年精力的にを書いている著者が日中・日韓関係の大きな刺となっている「歴史認識」の問題について書いた。 「ドキュメント」とタイトルについているように、「歴史認識」について問題となったさまざまな出来事を関係者の証言などを交えて検証しようとしたものです。そのため、「太平洋戦争は侵略戦争だったのか?」といった歴史そのものの検討や、歴史認識問題についての著者なりの解決策が提示されているわけではありません。 日のこの問題についての外交的な対応を丁寧にたどり直すことによって、この問題の経緯と政治家や官僚などの動き、そして問題の現在の位置を明らかにしようとしたといえるでしょう。 目次は以下の通り。 序章 東京裁判から日韓・日中国交正常化まで 第1章

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  • 池内恵『イスラーム国の衝撃』(文春新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月22 池内恵『イスラーム国の衝撃』(文春新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 2014年6月に突如としてイラク第2の都市のモスルを制圧し、その存在を世界に知らしめたイスラーム国。その後も、異教徒に対する過酷な取り扱いや欧米人の人質の処刑、カリフ制の宣言などイスラーム国の行動はまさに「衝撃」を与えるものでした。 そのイスラーム国の来歴と台頭の要因を、近年の中東の政治情勢と政治思想の面から読み解いたのがこの。著者は、早くからブログやさまざまなメデイアでイスラーム国に対する論考を精力的に発表しており、現在進行形の事態を鮮やかな手つきで分析しています。 日人の人質事件が発生している現在、まず「イスラーム国という現象」を知る上での基図書となるでしょう。 2001年の9.11テロで未曾有の大規模テロを引き起こしたアル=カイーダ。ビン・ラーディンを中心とする世界的なテロのネットワークはその力

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  • 原田実『江戸しぐさの正体』(星海社新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    9月17 原田実『江戸しぐさの正体』(星海社新書) 7点 カテゴリ:社会7点 近年、急速に教育現場などに普及してきた「江戸しぐさ」を徹底的に批判した。 「江戸しぐさ」自体は、かなり荒唐無稽なものを含んでいるので、それをここに批判しただけならば平板なになってしまったでしょうが、このではそうした批判にとどまらず、「江戸しぐさ」の「創始者」ともいうべき芝三光(しばみつあきら)と、その普及に大きな役割を果たした越川禮子にスポットを当てることで、「オカルトの生まれ方」をも描いたになっています。 「江戸しぐさ」江戸の町人の間で行われていたマナーということになっています。 その内容については、AC(公共広告機構)のCMにもなっていたので、例えば、「傘かしげ」(=雨の日に互いの傘を外側に傾け、ぬれないようにすれ違うこと)、「肩引き」(=道を歩いて、人とすれ違うとき左肩を路肩に寄せて歩くこと)、「こ

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  • 高田博行『ヒトラー演説』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月5 高田博行『ヒトラー演説』(中公新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 著者は近現代のドイツ語史を専攻とする言語学よりの人で、帯には「25年間150万語の演説データから扇動政治家の実像に迫る」との文句。 ヒトラーの代表的な演説をとり上げてそのレトリックに迫るようなかと思いましたが、演説家、そして政治家としてのヒトラーを時代ごとに追う内容で、思ったよりも伝記的な色彩の強いでした。 ですから、ヒトラーのことをある程度知っている人には少しまだるっこしい部分もあるかもしれません。ただ、最後まで読むとヒトラーの演説の一番のキーポイントが浮かび上がるちょっと凝った構成になっています。 目次は以下の通りです。 序章 遅れた国家統一 第1章 ビアホールに響く演説―一九一九~二四 第2章 待機する演説―一九二五~二八 第3章 集票する演説―一九二八~三二 第4章 国民を管理する演説―一九三三~三四

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  • 濱口桂一郎『日本の雇用と中高年』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月21 濱口桂一郎『日の雇用と中高年』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:社会8点 著者の濱口桂一郎は、去年『若者と労働』(中公新書ラクレ)という新書を出しましたが、それと対になるテーマのです。 日の雇用が、仕事に人を割り振る「ジョブ型」ではなく、人に仕事を割り振る「メンバーシップ型」であり、それが時代の変化とともに歪みを生じさせている、という現状認識は『若者と労働』、あるいはその前の『新しい労働社会』(岩波新書)と共通。 『若者と労働』では、そうした現実に対して「ジョブ型正社員」という解決策のビジョンと大学改革の必要性を示したわけですが、このでは政策レベルの議論を丁寧にしつつ、最後に労働政策だけではなく福祉制度の変革を訴える内容になっています。 日では年功賃金が根強く、中高年は若者に比べて高い賃金をもらっています。だから、不景気になり会社の経営が苦しくなると、賃金の高い中高年がリ

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  • 2013年の新書 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月20 2013年の新書 カテゴリ:その他 今年は62冊の新書を読みました(ここでとり上げていない古で買ったものとかを合わせるともう少し読んでいるのですが)。年内にあと1、2冊は読めそうな気もしますが、11月発売分のものまで読み終わったところで、「2013年の新書」といきたいと思います。 経済大陸アフリカ (中公新書) 平野 克己 中央公論新社 2013-01-24 売り上げランキング : 6603 Amazonで詳しく見る by G-Tools 文句なしのNo.1。 21世紀になって1980年代以来の経済停滞から抜けだしたアフリカの成長の要因とそこに大きくコミットする中国の姿を描きつつ、農業生産や製造業が育たないアフリカ経済の欠点、国際援助の歴史とその有効性、非効率な政府を飛び越えて活躍する企業など、アフリカを通して現在の グローバル経済の姿が見えるようになっています。従来の経済学

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  • 鈴木恵美『エジプト革命』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月8 鈴木恵美『エジプト革命』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 2011年の「アラブの春」で若者たちが中心となり30年にわたって独裁を続けてきたムバーラク政権を打ち倒したエジプト。しかし、その後の民主的な選挙で選ばれたムルシー大統領(日だとモルシの表記も多いですがこのの表記はムルシー)は、若者たちと対立。最終的にはこの対立に軍が介入し、「革命」によって生まれた民主主義はまた「やり直し」となりました。 この複雑なエジプト情勢をフォローし、その背景と、「革命」が失敗に終わった理由を分析したのがこの。 同じ年に東日大震災があった関係で日では追いかけることが難しかったエジプトの動きを丁寧にまとめてくれていますし、また、「民主主義」というものについて考えさせる内容になっています。 複雑怪奇なエジプト情勢をおったこのをそのまま要約するのはなかなか難しいので、以下は個人的に興

    kinbricksnow
    kinbricksnow 2013/11/08
    “ 「民意」は「選挙」にあるのか、「街頭」にあるのか。「直接行動」を評価すればするほど、政治は街頭でもデモンストレーション合戦に。エジプトではそれがクーデターに行き着いてしまいました”
  • 新雅史『「東洋の魔女」論』(イースト新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月13 新雅史『「東洋の魔女」論』(イースト新書) 6点 カテゴリ:社会6点 『商店街はなぜ滅びるのか』(光文社新書)が非常に面白かった社会学者・新雅史の新刊。 ただ、新刊といってももとになっているのは2003年に書かれたこの人の修士論文のようで、それを改めてまとめ直したのがこののようです。 そのせいもあって、非常に面白いテーマを取り扱っているんですが、全体的にはちょっと物足りない。もうちょっと加筆してぜんたいの分析に厚みを持たせて欲しかった面はありますね。 このは2部仕立てになっていて、第1部は「実践としてのレクリエーション」、第2部が「歴史的必然としての「東洋の魔女」」です。 まず、第1部では「レクリエーション」という急速に廃れつつある言葉の歴史と意義が明らかにされます。 「レクリエーション」という言葉を聞いて何を思い出すかは人によって違うと思いますが、おそらくはドッジボールやフ

    kinbricksnow
    kinbricksnow 2013/08/15
    この本では「東洋の魔女」の分析を通じて、工場労働とレクリエーション、レクリエーションとスポーツの関係、高度成長期の女工の問題、ジェンダーの問題など、さまざまな問題が見えてきます
  • 岡本隆司『近代中国史』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月4 岡隆司『近代中国史』(ちくま新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 『李鴻章』(岩波新書)が面白かった岡隆司による近代中国の通史。 一応、「通史」と書きましたが、歴史上の人物はほとんどといっていいほど登場せず経済と社会の仕組みを描くことに集中した経済史・社会史の通史になります(この点、同じちくま新書の坂野潤治『日近代史』とはずいぶん趣が違います)。そのため、読むハードルはちょっと高いと思います。明から中華人民共和国の成立前の大まかな歴史を押さえていないと、政治史とのつながりを見失ってしまうこともあると思います。 けれども、内容は非常に刺激的。中国の地域と社会の特徴、明が生み出した特殊な統治システムとそこから生まれてきた特異な経済、そして清朝におけるその特異な経済と国際経済との出会い、蒋介石の国民政府を後押しした経済状況など、世界史の教科書で習う歴史とはまったくちがう視点からダ

    kinbricksnow
    kinbricksnow 2013/08/05
    【オススメ】明の朱元璋は海外貿易も禁止し、閉鎖的な経済圏をつくり上げます。つまり、江南地域を「海外」から切り離し、華北と統合させることで「中華」を維持しようとしたのです