2017年9月12日のブックマーク (2件)

  • 小説「きっかけ」② - Blue あなたとわたしの本

    「俺は美術の専門高校に入ったけど、大して才能がないことにすぐに気づいた。あの高校はレベルも高かったしな」 たしかに受験生は全国から集まっていた。日で最初に設立された画学校で、歴史は東京芸術大学よりも古い。堂印象や草間彌生も卒業生だ。年に一度、美術館を借りて行われる美工作品展は、そのへんの美大の展覧会を超えていたと私も思う。私たちは洋画科の生徒だった。河原の絵の才能については、わからない。感覚的に鋭い作風ではあった。佐伯祐三の画風にすこし似ていた。ただ、演技の才のほうが恵まれていることは、やはりたしかだろう。 河原は話しつづけた。 「おまえは地元の美術大学へ進み、俺も地元の普通大学を出た。覚えてるか?」 もちろん覚えてるよ、と私は苦笑した。若くはないとは言え、まだ三十九だからな──。 「どうして東京芸大を受験しなかった?」、河原は真剣な目になって私の顔を見た。「先生も勧めてた。洋画科のな

    小説「きっかけ」② - Blue あなたとわたしの本
    kinoeri
    kinoeri 2017/09/12
    話が、どんどん複雑になって行く……
  • 小説「きっかけ」① - Blue あなたとわたしの本

    高校時代からの友人の河原が久しぶりに帰郷した。彼は今、プロの俳優として活躍している。メールでのやりとりは頻繁にあったが、直接顔を合わせるのは五年ぶりだ。私も彼も三十九歳になった。けっこういい歳だ。 「この店、ほんといいよな」 だろ、と私も笑顔を返す。河原も私も酒が一滴も飲めない。店は店でも喫茶店なのだ。二人とも、大のコーヒー好きでもある。 少し懐古的な内装で、音楽がうるさくなく、長居できる店が私と河原の好みだ。この趣味は高校生のころから変わらない。気に入った店を見つけては、美術や映画音楽・文学を、飽きもせず語り合ったものだ。 「俺たちの好きそうな喫茶店をまた何軒か用意しといてくれよ」。六日前の電話での会話だ。いくつになっても子どもっぽさの抜けない自分たちを自覚しつつ、それを楽しんでいる口調。私は今回、河原を連れていく店を四つほどきめていた。喫茶店の住所と雰囲気を手短かに話した。四つ目の店

    小説「きっかけ」① - Blue あなたとわたしの本
    kinoeri
    kinoeri 2017/09/12
    物語の続きが気になりすぎます。