慶應義塾大学アート・センターが「土方巽アーカイヴ」を設立したのは、1998年4月である。現代芸術に関する「研究アーカイヴ」の構築についての、アート・センターの関心の具体化の最初の試みであった。 1960年代に前衛芸術家として活動をさかんにした土方巽の舞踏は、我が国の現代芸術を代表するアーティストたちとのコラボレーションを通じて生み出され、たんなるパフォーミング・アートの領域には収まらない「横断性(トランス)」を特徴としており、この点においてアート・センターの「研究アーカイヴ」のパイロット・モデルとして最適の素材であった。 また、「アーカイヴ」は、ある特定の主題に関するドキュメント(一次資料)を収集・保存・管理することを使命とするが、土方巽アーカイヴは、土方巽記念資料館(アスベスト館/東京・目黒)から、数多くの一次資料の寄託を受けることで、無二のアートアーカイヴとして、その本格的な活動