カメキチの目 ⑤ 「べてるの家」の向谷地さん、「ある」の芹沢さん。ご両人の人間を根源的にとらえる理念・思想をかり、それを紡いできた鷲田さんの主張。 そのことを老いの介護という現実にそくして考えるとどういうことがいえるのだろう。 -介護の現場を前にして- 【引用】 「暴力としてのケア したがってまた、弱い者を助け、支えるケアの現場は、ケアという行為そのものが暴力すれすれの危うさを隠しもつだけではなく、ケアが暴力そのものに反転してしまう可能性を拭うことのできない空間でもある。… 辱めを口にできない被介護者の鬱屈がこのように「攻撃」へと転化することで、「高齢者と介護提供者の関係性には齟齬が生じ、両者の関係はまるでお互いに棘を刺しあうヤマアラシのような状態となる」。 「ヤマアラシのような状態」は、被介護者の受動性だけが引き起こすものではない。介護者のほうもまた、「優しさ」「暖かさ」「倫理」といった