1957年8月11日、佐賀県鳥栖市五間道路無番地。 孫三憲、季玉子夫婦の次男として、孫正義は生まれた。 佐賀県鳥栖市は戦前から韓国・朝鮮の人達がバラックを建てて住みついた区画である。 祖父母や父母が一所懸命に働いている姿を見て、正義少年は思った。 「いつかみんなを楽にさせてやりたい。この泥沼から頑張って、少しでも陽の目が見られるようになってやる」 父・三憲は正義の一挙手一投足を褒めちぎった。 「ひょうっとすると、おまえは天才なんじゃないか?」 「日本で一番だ」 「おまえは大物になる」 親バカの極地と言ってもいい。 そんな褒められ方をずっとされてきたおかげか、正義は「やればなんでもできるんだ」と思うようになった。 いったん信じ込めばどこまでも突き進んでいく正義の性格は少年時代に形成されたといっていい。 小学校の成績はずっと一番だった。 とはいえ、教科書はずっと学校に置きっぱなしで、近所の子供