趣味は人と分かち合ってなんぼ、というものもあれば、一人だけで楽しむものもある。その対象と扱い方は人によって様々で、僕の場合たいていの趣味は一人だけで楽しむことに費やされる。ときどきは人と分かち合うこともある。人と映画の話をしたりマンガの話をしたり音楽の話をしたり「あれ知ってる、これ知ってる」だけで終わってしまうとすごくつまらないんだけど「どこが良い、ここはどう感じる、この部分をどう思う」といった中身に踏み込んでいけば話はおもしろくなる。趣味がコミュニケーションの媒体として機能する瞬間だ。 分かち合うこと 分かち合うとは、わかり合うことではない。先日自分の親ぐらいの歳の人と、夏目漱石の話をした。その人は「三四郎」「それから」「門」の成長過程を描いた前期三部作が漱石の真骨頂だと言っていた。僕は後期三部作しか読んでいないから「へえ、そうなんですか」と話に踏み込めなかった。僕は「行人」がとても好き