竹内研究室の日記 2019 | 01 |
中学でも、高校、大学でも最近の学校は 「創造性を持った課題解決能力の教育をします」 「プレゼン力、コミュニケーション能力を育成します」 とアピールするところが目に付きます。それに、「グローバル力」を付ければ役満でしょうか。 これは企業が欲しい学生像だったり、学生が就活でアピールする時の言葉でもあります。 しかし、私も教育に携わる一員として、このような風潮がいまひとつ理解できません。 基礎の学力ができていない学生に特殊な教育をすれば、課題を解決できるようになるのか? 話す内容を持たない人が卓越なコミュニケーション能力を発揮してプレゼンできるのか? 学生もかわいそうです。 基礎の教育がおろそかのままで、「創造性を発揮して」「課題を解決し」「プレゼンしろ」と言われたら、デタラメを堂々と話す若者が量産されるのは必然です。 問題なのは若い人ではなく、そうした人を育成しているシステムです。 現在の「課
青色レーザーダイオードを実現した赤崎先生、天野先生、中村修二さんがノーベル賞を受賞されました。本当におめでとうございます。 特に中村修二さんは企業(日亜化学)での仕事で受賞したわけですから、私は中村さんよりも下の世代ですが、企業で技術者だった私は大変勇気づけられました。 大変失礼な言い方をすると、赤崎先生は偉すぎて雲の上の存在ですが、中村修二さんならひょっとしたら自分もなれるかもと、企業などで実用研究をしている技術者にも思われるところがあるのが、今回のノーベル賞は良いですね。 また実は私は学部、修士の時に青色レーザーに関連する研究をしていたので、昔(学生時代)を思い出して感慨もひとしおです。 当時は青色レーザーを目指して、今回受賞したGaNとZnSeが激しく競争。いずれの陣営も日本の企業・大学が中心で、「日本を制したものが世界を制する」という、日本の黄金期でした。 私は「負け組」であるZn
早稲田の小保方さんの博士論文への対応は実に考えさせられるところが多いです。 いい加減な論文でも学位はオッケー、というのはまじめにやっている学生や指導している教員にとってはやり切れない思いでしょうね。 それに、少なくとも早稲田の(早稲田以外もある?)学位のレベルがばれてしまったわけで、博士取得者への評価も下がるでしょう。 でも、実はこの件で腹を立てているのは、自分のような大学教員や(苦労して)博士を取った人だけかもしれません。 大概の人は、「別に学位を与えて人が死ぬわけでもないし、お金が無くなるわけでもない。別にいいじゃないか」という反応かもしれません。 政治家の発言などには、そういうニュアンスを感じますね。 というのも、学位の基準になると、誰しも自分のことを思い出してしまうわけです。 博士は取ってなくとも、「そういえば、自分は大学ではほとんど勉強しなかったし、いい加減な卒論でも卒業できたよ
日本ではITやエレクトロニクスはダメダメですが、一歩、国外に出れば成長産業。 私が研究しているSSDや半導体メモリを使ったストレージは、ITのクラウド化で猛烈に成長している。 例えば、Flash Memory Summitという8月にシリコンバレーで行われたマーケティングの会合では、400件以上の発表が行われ、4000人もの参加者が。 でも、日本の半導体やITはリストラなどの後ろ向きばかり。GoogleやAmazonのように、世界はドンドン進んでいくのに、日本はどうするんでしょうね。 私は日本の大学に居るし、国(税金)からも予算を頂いて研究している部分もあるので、何としても、日本の企業に貢献したい、復活のお手伝いをしたいと思っています。 ですが、共同研究などのお話をしていると、愕然とすることばかり。 研究するには、それなりにお金が必要ですが、「金は出さないけど、権利は全てよこせ」というケー
IEEE IMW(International Memory Workshop)という、半導体の不揮発性メモリの学会に参加するため、アメリカのモントレーに来ています。 竹内研からは4件の発表をします。 モントレーはシリコンバレーから車で2時間ほどと近いため、シリコンバレーの多くの企業の人が参加し、技術的議論に加えて、業界内の情報交換なども活発に行われる。 自分にとってもう一つの楽しみは、東芝でフラッシュメモリを一緒に立ち上げた、先輩や仲間に会えること。 現役で東芝に残っている人はわずかで、ほとんどの人が、辞めました。 私は大学でも東芝と協力して研究をしているのですが、いまでも、東芝と関係があるのは、私くらいでしょうね。 大半の人は、競合関係の外国企業に移りました。 東芝をやめて5年も経つのに、アメリカ人から、「なんでお前は東芝を辞めたのか?」と、頻繁に聞かれます。 毎年説明しているので、もう
今年度も今日で終わりですね。今年は、5年前に東大で研究室を立ち上げた時に入学してきた畑中君が、無事博士を取って卒業。 そして、3年半にわたって研究室の中心となって活躍してきた、助教の宮地君がパーマネントの職を得て独立します。 学生だけでなく、研究員にとっても、大学の研究室は通過点。 ポスドク問題と言われるように、今や大学でパーマネントの職に就くのは非常に厳しい。 竹内研での活躍を評価されて、激戦を勝ち抜いたのは、本当にうれしいです。 これからは自分の研究室を立ち上げることになるのですが、健闘を祈ります。 さて、半導体メーカーが苦境に陥り、リストラが相次いでいる中で、よく「学生の就職はどうしているのですか?」と聞かれます。 今まで半導体業界の凋落と学生の就職を結びつけて考えたことが、実はありません。 今や、学生には「この会社、業界に就職しろ」と教員が指導する時代ではないです。 完全に学生の意
日本の電機産業の収益が悪化してきて、韓国や台湾の企業にヘッドハンティングされていくエンジニアが話題になっていますね。 日本のエンジニアがアジアの企業に移ることで技術流出だとか、裏切りだとか。 その一方、日本企業がやりたい仕事をさせてもらえないのであれば、仕方ないのではないか、とか。 見方は色々でしょうが、私が気になるのは、エンジニア個人にとって、本当にプラスになる転職なのか。 よくよく考えた方が良いと思います。 これは、海外企業に移るケースだけではなく、あらゆる転職にあてはまりますが、技術者はノウハウを身に付けている以上、法的な問題とは別に、転職によりIPや技術流出の話は必ず起きます。 例えば、アメリカのIT企業からスピンオフしてベンチャー企業を興す場合に、古巣の企業から訴えられることもあります。 その一方、グーグルからヤフーにマリッサ・メイヤーが移ったケースのように、(今のところは)転職
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