朝日のオピニオン欄「異議あり」が面白かった。三度映画化されるという「三丁目の夕日」、その世界を、経済学者の飯田泰之氏が厳しく批判しているのだ。団塊の世代の人口が多く彼らにうけるのだから「三丁目」の人気が高いのは当然としながら、飯田氏は質問にこう語る。 ――日本では社会の改革期に、ともすると懐古趣味が現れる、とお考えだとか。 「例えば倒幕運動のスローガンである尊皇思想は一種の懐古運動です。ただし、その目標である『勤王の世界』は、現実には存在しない理想の対象でした。その虚構を原動力にしつつ、ある時点で上手に反転できたから、近代日本がある。昭和初期にも理想化した日本を懐古する向きがありましたが、このときは大失敗しました」 ――懐かしむのが悪いことだとは思えませんが。 「そもそも昭和30年代はどういう時代かといえば、殺人や強姦などの凶悪犯は現在よりはるかに多く、国民の所得は低い。環境破壊もひどく、