20代の頃、山崎隆之八段は揮毫の際に「独往」と書いていた。棋士としての彼の個性を最も端的に表している二文字とも思える。 「元女流棋士の石橋幸緒さんから教えていただいたんです。学のない僕でも『独りで往く』という文字が気に入って、一時期は好んで書いていました。 僕の若い頃は東高西低の時代で、東京では何人かの棋士が局面を一緒になって考える研究会が全盛でした。でも関西にいる自分自身には環境も資質もない。だから『独往』には良い意味でも悪い意味でも反発を表していた気がします。 僕も含めて、トップ棋士と比較して明らかに劣っている棋士が、トップ棋士と同じことを同じくらい研究して負けていくのは、ちょっと何やってるんだろうという思いがありました。弱いなら弱いなりに勝つための適性を見つけて勝負しなきゃいかんだろう、という思いもあったと思います。 今でも時々は書きますけど、確固たる自信と力を持って独りの道を往って