久しぶりに熱海の家に戻ったら、玄関先にあるジャスミンの花が満開になっていた。あまりにも綺麗に咲き誇っていたために、見た瞬間、思わず「うわあ」と声が出た。自分のこころの中にある、柔らかい何かが膨れ上がるような感覚を覚えて、ああ、これは夕日を見た時の気持ちと同じだと思った。それを目にした瞬間、何もかもを放り投げて駆け出してしまう、自分の小さな考え事を吹き飛ばしてくれる力がある。 花を見ると、嬉しくなる。花のゴールは、たぶん、咲くことだ。自分の命を大きく開き、無心に咲き誇る花を見て、勝手に嬉しくなる。この気持ちは、小さなこどもを見ている時に覚える、あの、躍動するような嬉しさに似ている。生きているものを見ると、どうして、これほどまでに嬉しさを覚えるのだろうか。きっと、ひとりひとりのこころの中にも花の蕾は隠されていて、それは、いまこの瞬間にも咲き誇る時を待っている。花を育てる時のように、ひとと付き合