認知言語学はアンチ形式化だという見方があるようですが,それはちょっと強すぎるまとめ方のように思います. 穏健な立場の一例として,ジル・フォコニエ『メンタルスペース』から拙訳で引用します: 数学に深い関心をいだくひとたちにとって皮肉だったのは,彼らがブルバキやホワイトヘッドの基準に順応しないといって非難されたことだ.論理に基づいて広範な形式化をしようという主張は,立派なことではあるにせよ,我々がやっているような科学にとっては見当違いだと我々はみている.数学や物理科学が何世紀もかけて到達した発達と見解の安定の段階から,我々はまだ遠いところにいるのだ.不十分な分析に時期尚早な形式化をしてみても,科学的な理解の適切な進展を後退させ障害となるおそれがあると我々はみている.正確さと明示性はともにたいへんのぞましいものだが,我々はこれらを20世紀の数学における形式主義と区別する.後者も特定タイプの研究に