第61回受賞作品 『来てけつかるべき新世界』上田誠 >選評PDFをダウンロード 克明な噓は大胆な本当に似る 岩松了 市原佐都子『毛美子不毛話』をイチオシで選考会にのぞんだ。珍しく、と言うべきか“女性”についての戯曲だと思った。それが女性の地位の向上などを謳ったものではなく、むしろ逆に否応なく何かに従属していかなければならない中身のない人間としての女を、自虐的にユーモラスに描いてあって、しかもなぜか、ふてぶてしさをも感じさせる。そのふてぶてしさは何だろう? と思う。中身のなさは結局、人間全般につまり男にも通じる普遍であるはずのものだが、中身を埋めようとする男の脇で、自分には中身がないと図々しくも言い放っているそのふてぶてしさではないのか。言ったが勝ちとばかりに先にそれを言う女の図々しさ、ふてぶてしさ! でもそれは“おびえ”にも由来しているのだろうと思う。劇中で“私”が見せる《横になって鼻くそ