人間って、愛着が強くなりすぎると、ついつい、「Aに対する自分の視点」=「Aに対する他者の視点」だと、思いこんでしまいがちです。 自分の子どもは、他人も同じように「かわいい」と思ってくれているはず、という錯覚。 僕はこんな話を思いだすのです。 「水族館の通になる」(中村元著・祥伝社新書)より。 初めて訪れる水族館では、あるいは水族館が好きな人ほど、途中で時間がなくなって、一番楽しみにしているコーナーをじっくり見ることができなくなってしまう。残念なことに、水族館の最後のクライマックス展示コーナーを、足早に駆け抜けてしまう人はかなり多いのだ。 大きな理由は、水族館のアリの巣のように曲がりくねった通路に入ってしまうと、建物のどこにいるかが分からなくなり、距離感や時間間隔を失ってしまうからだが、それに輪をかけて、水族館を作った人の意図と、観覧者の気持ちに大きなズレがあることを知っておくといい。 水族