イラスト 小幡彩貴 アラビア半島のイエメンから東アフリカにかけての地域で、「カート」と呼ばれる植物が地元住民に人気を博している。ツバキやサザンカの木に似ており、その葉っぱを食べると、酒に酔ったように気持ちよくなる。 私が通っているソマリランドやソマリアに住むソマリ人もとにかくカートが大好き。ソマリ人エリアは乾燥しすぎてカートを栽培できないため、隣のエチオピアやケニアから車で輸送している。 午後一時か二時頃、ウーウーとサイレンを鳴らして走ってくる車があれば、それはパトカーでも救急車でもなく、カート運搬車だ。カートは刺身と同様、鮮度が命で、朝摘みのカートを積んだトラックがどんな砂漠でも内戦地帯でもお構いなく猛スピードで突っ切って各地の市場に到着する。するとカート食いの男たちや小売り商人がそこに群がり、阿鼻叫喚の様相を呈する。奪い合うようにして、コンサートで渡す花束くらいの枝付きカートの葉を買い