開花しなかった天才、道をそれた天才、今なお描き続ける天才……あだち充の兄通してマンガの黎明期を描く『あだち勉物語』 歴史に名を刻むのは一部の人間だが、時代は無数の記述されなかった人々を巻き込んで作られる。 マンガ史的にはほぼ無名と言っていい、ひとりの男の伝記的マンガ『あだち勉物語』(ありま猛)を読みながら、そんな言葉が頭に浮かんだ。 主人公の名前はあだち勉。あだち充の兄であり、自らもギャグマンガを多くの雑誌に作品を発表する、期待の新星のひとりだった。しかし、奔放で遊び好きな人柄が災いし、週刊誌が誕生し、マンガ業界が大きな盛り上がりを見せる頃には、マンガ界の中心から外れてしまう。 『あだち勉物語』は、この無名のマンガ家の軌跡と、彼と同時代を生きた人々の生き様を、3つの軸を中心に描き出している。軸の一つは赤塚不二夫プロでの出来事だ。安定した筆力の勉は『おそ松くん』『天才バカボン』の作者・赤塚不
![開花しなかった天才、道をそれた天才、今なお描き続ける天才……あだち充の兄通してマンガの黎明期を描く『あだち勉物語』](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/accd0e474a2b2154c6bac21d85372630966548c9/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Frealsound.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2022%2F08%2F20220812-adachi01.jpeg)