2015-02-16 長編小説『ディセミナ シェアード・ワールド』プロローグ「太陽と月と目覚め」 陽光を浴びながらベランダにあるベンチに座る月島隻菜の読んでいる本はベイトソンの『精神の生態学』だった。彼女はいま現在ある種の人間的な精神の分析をシステム論のタームで整序することを自らの課題としながら批評=批判的に吟味するという作業を行っている。 「ラカンとベイトソンの融合って、そういえば斎藤環さんがやっていたなぁ」 月島はそう独りごちた。血のようなブラックコーヒーが太陽の明かりを照り返しながら可視光線を振りまいていた。軽く頬を撫でる空気はとても爽やかで彼女の読書効率のファシリテータとして機能していた。諸物の連関すなわちネットワーク全体がシステム論的な精神=マインドとして魂を持っているという遍在性を彼女は体感しベイトソンの主張をその身に刻みつつあった。この風のおかげでどこかの桶屋が潤沢な資本を獲