日本と中国が「言葉の戦争」に突入した。安倍晋三首相は5月30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議で基調講演を行った。中国を名指しこそしなかったものの、「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは、強い非難の対象とならざるを得ない」と批判した。 翌31日、米国のチャック・ヘーゲル国防長官が安倍首相の発言に呼応する演説を行った。「ここ数カ月の間、中国は南シナ海での領有権を主張し、地域を不安定化させる一方的な行動を取ってきた」「威嚇や軍事力を通じた領有権の主張には断固として反対する」。 これに中国の王冠中・副総参謀長が反発。「中国に対する一種の挑発だ。決して容認できない」と切り返した。 なぜ、この時期に日米中がからむ「言葉の戦争」が勃発したのか。今後、どのような展開が見込まれるのか。日本国際問題研究所の主任研究員で、海洋安全保障を専門にしている小谷哲男氏に聞いた。 (聞き手