先日ITmediaに載った梅田望夫インタビューがすごい反響だ(はてなブックマークのページから、関連ページが辿れる)。特にネガティブな反応が実に多くて、これは私もひとこと書いておきたいと思ったので、書くことにする。 最初に結論を書くと、「梅田望夫はだんだん自然体になっている」んだと私は思う。いまの梅田さんのほうが、おそらく本来の梅田さんの姿だ。 『ウェブ進化論』のときの梅田さんは、主にネット側(「あちら側」)に立って、そこからリアル側(「こちら側」)を「啓蒙」する立場だった。 当時の日本では、いまよりもネットに対する疑いやマイナスイメージがまだ強かったし、グーグルの圧倒的な強さやその意味なども、一般レベルではそれほど知られていなかった。この状況で、『ウェブ進化論』はグーグルをはじめとするウェブの新技術、それが切りひらく新しい社会を一般に知らしめるという役割があった。だからここでの梅田さんは、
インターネットの好ましからざる未来を止め、生成力を保つことはできるのか 2008年6月25日 IT コメント: トラックバック (0) (これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら) 本連載の第1回「書籍とクリエイティブ・コモンズとコンテンツの未来」で、Creative Commons のライセンスを適用した書籍について書きましたが、その後の同様の試みを取り上げたいと思います。 これも本ブログの「「自由の真の代償」と「自由の真価」 ~ サイバースペース独立宣言を越えて」で取り上げた『Access Denied』の著者の一人であるジョナサン・ジットレイン(Jonathan Zittrain、WIRED VISION ではジョナサン・ジットレンという表記も多いようです)の新刊『The Future of the Internet and How to Stop It』が発売されて
現在のインターネットのシーンでこれを読まなければ先には進めないよという一冊があるとすれば本書だろう。ただし、すでにブログシーンのコアなところに漬かっている人なら、知っている話ばかりであるという印象を持つかもしれない。あるいは、ある種のボックスに分類されるべき視点からの思索ノート群に見えるかもしれない。私もどちらかというと当初ざっと目を通したときにそう思った。再読して大いに反省した。 個々の点においては重箱の隅をつつくような批判も可能だが、この書籍全体が示唆するものは相当に長い射程を持っている。最初にここから引用し紹介するのは反って誤解を招きかねないが、次の指摘は一見すると柄谷行人あたりが言いそうなごく当たり前のことのようにも思えるが、この要点を思索の根幹に据えて、ITの未来を正確に見ている人は少ないのではないか。 マルクスの未来社会像としては『ゴーダ綱領批判』の「各人はその能力に応じて働き
Web 2.0は我々の文化を殺すのか?(その1) 2007年9月12日 ITカルチャー コメント: トラックバック (1) (これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら) 「Web 2.0」という言葉ももはや手垢がつきまくっており、改めてその言葉を正面から論じるのにためらいを覚えますが、日本では梅田望夫氏の『ウェブ進化論』と西垣通氏の『ウェブ社会をどう生きるか』を両極として、ここ二年ほどで「Web 2.0」を主題に据えた数多くの書籍が刊行されました。 本国(?)アメリカでも、インターネットの情報伝達能力と双方向性に草の根ジャーナリズムの可能性を見るダン・ギルモアの『ブログ 世界を変える個人メディア』、ブログを通じた企業と顧客の対話の重要性を訴えるロバート・スコーブルらの『ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち』、そして企業が顧客を巻き込むオープンなマスコラ
SCOのIBMなどに対する訴訟は、世界のソフトウェア業界を騒がせてきたが、驚いたことにSCOはUNIXの著作権をもっていないという判決がユタ州の連邦地裁で出た。なんでこんなことになるのか、ウェブで調べてみたが、問題は非常にややこしい(間違っていたら訂正してください)。 UNIXの著作権はもともとAT&Tがもっていたが、これを1993年にノベルが買収した。他方、SCOというのは、もとはx86用UNIXを開発する会社だったが、その権利の一部をカルデラ・システムに売却した。カルデラは、ノベルが一部出資してLinuxのディストリビューションを開発する会社だったが、業績不振のため創立者が辞め、Darl McBrideがCEOになった。このとき社名をSCOグループと変更したのでよけいややこしいのだが、これは最初のSCOとは別の会社である(以下「SCO-G」として区別する)。 Linux市場で苦戦し
ルパート・マードックに買収されたWSJは無料になるかもしれない、とBusiness Weekが報じている。NYタイムズも、コラムだけを有料化していたが、やめることを検討しているようだ。 理由は単純。購読料より広告収入のほうがはるかに大きいからだ。タイムズの昨年の購読料は1000万ドルだったが、今年の広告収入は1億7500万ドルになる見通しだという。これに対して、WSJの購読料は6500万ドルだが、広告収入は7500万ドルにすぎない。これはタイムズの1200万ユニークビジター/月に対して、WSJが260万人に満たないためだ。 無料化には、もう一つの理由がある。どういう記事を読む読者がどういう広告を見るかという個人情報を使って、パーソナライズされた広告を出すことができ、さらにそのデータを他の媒体の広告にも利用したり、売ったりできるからだ。 供給が需要を上回る財は、自由財になる。情報が供給
以下の文章は、Allison Randal による Beyond the Browser の日本語訳である。 Allison Randal は Onyx Neon の創業者、社長であり、The Perl Foundation の役員を務め、またオライリーメディア社が主催する複数のカンファレンスでも共同議長を務めている。 先週 OSBC で、現在の技術トレンドに関する Radar トークを行った。昔からあるデスクトップアプリケーションが強力にネットワーク化するトレンド、Google Docs のような Web 2.0 オンラインアプリケーションは良く知られている。問題は、ウェブブラウザがアプリケーションを開発するにはひどく限定されたプラットフォームで、それに JavaScript は機能十分とはいえない言語であることだ。開発可能なアプリケーションの種類、ウェブブラウザで提供できるユーザ体験に
Flickrは写真共有サイトとしては老舗になってきた。投稿写真数も3億点近くに達しているはず。こうしたサイトは,コンテンツ(写真)の宝庫となるだけではなくて,マーケッティングデータの宝庫にもなりうる。 そのFlickrにこのほどCamera Finderというコーナーが設けられた。そこには,投稿写真で使われたデジタルカメラ機種に関する統計データが満載されている。Frickrコミュニティーでどのデジカメやケータイ(デジカメ搭載)がよく利用されているかが,グラフと表で提示されている。 以下は,利用頻度の高い人気機種の推移を示したグラフである。 *Frickrコミュニティーの人気デジカメ機種(クリックで拡大表示) 以下のように,メーカー別に各機種の人気度もチェックできるようになっている。 *プルダウンメニューでメーカーを選別 次は,パナソニック製品を選んだ時のページ(一部)である。 *Panas
ネットベンチャーが革新的な技術やサービスを生み育て,大手企業がそうしたベンチャーを買収し大きく開花させていく。ネット業界では,90年代後半のバブル時期以降,大型買収劇が数多く演じられてきた。振り返ってみると,うまくいった買収もあれば,期待はずれに終わった買収も少なくない。 これまでのインターネット買収劇の中から,ワースト10あるいはベスト10を選ぶとどうなるのか。以下は,SeekingAlphaが掲げたワースト買収と,HipMojoが選んだベスト買収である。 ●Top 10 Worst Internet Acquisitions(ソース:SeekingAlpha) 1. Broadcast.com - acquired by Yahoo! in 1999 for $5 billion. 2. AOL - merged with TimeWarner in 2000 3. Excite -
2006年08月05日16:30 カテゴリValue 2.0 広告から各告、そして共告へ もはやそれを「広告」と呼ぶのはおかしいのだろう。 On Off and Beyond: たかが広告費ではないということについて このインターネット広告、果たして今後どれくらい伸びるのか?米国では、消費者がメディアに接する時間のうち23%がインターネットに費やされているのに、オンライン広告はまだ全広告費の6%にしかなっていない。また、従来、多くの企業は自社製品の5-10%しか広告してこなかったとされるが、成功報酬型の広告であれば、どんなにニッチな製品でも情報発信をすることができるため、広告のニーズそのものがさらに広がるとされる。 トロール漁船で漁っていたものが、一本釣りで、しかもその方が安く漁れるのだとしたら、トロール漁船の立つ瀬がない。「広告」の世界で起こっているのは、そういうことだろう。一本釣りもト
2006年2月9日、東証マザーズに上場したドリコム。そのドリコムがIPO後の戦略として目指す方向性はどういうものなのか。5月25日に開催されたNew Industry Leaders Summit(NILS)にて、「ドリコムPost IPOの経営戦略」と題したセッションが開催され、同社 代表取締役の内藤裕紀氏がインターネット業界のトレンドと共に同社の戦略を語った。 同セッションでモデレーターを務めたのは、ネットエイジグループ 代表取締役社長の西川潔氏。第1次ネットベンチャーブームともいうべき1990年代後半に、数多くのネット起業家を生みだしたことで注目を浴びた人物の1人だ。ドリコムの内藤氏にとって大先輩とも言える。その西川氏を前に、まず内藤氏がプレゼンテーションを披露した。 Yahoo!のIPOから10年 内藤氏は、1996年に米Yahoo!がIPOしてから10年たった今、インターネットの
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前回の書評の最後に「明日続きを書く」と言っておきながら放置モードに入ってしまったのはいくつか理由があって、一つは仕事が猛烈に忙しくなった(正確に言うと梅田氏新著出版イベントに出るために棚上げしていた膨大な仕事が棚から崩れ落ちてきた)、一つはあと何回書けばこの話が終えられるのかが自分で分からなくなっていた(笑)。もう1つは、イベントをきっかけにいろいろなブログで論評が書かれていたので、それらを読みながら考えを巡らせていた。 今も棚の上の仕事が全部無くなったわけではないので、実はこんなことを書いているヒマはないのだけれど、書くと言っておいて書かないとまたまた後でいろいろな厄災が降りかかってきそう(笑)なので、もう見切り発車で続きを書いておく。 前回、「Googleの本当の功績とは、ネット上での情報の組織化の効率性を現実世界よりも高めるイノベーション競争に火をつけたことだ」と書いた。梅田氏の言葉
このページには、私が新聞などに書いた書評の全文をアップしていきます。以前は「信濃毎日新聞」専用でしたが、その後いろいろ広がってきているので、枠をはずして全部ここに収めていきます。(クリックすると「感じない男」ブログ掲載の書評全文にジャンプします。) 2009年7月12日日経新聞 『いのちの砂時計』『終末期医療と生命倫理』『余命半年』『がんと闘った科学者の記録』 二〇〇六年に、富山県の射水市民病院で、終末期患者の人工呼吸器が取り外されて死亡する事件が発覚した。これは殺人ではないかということで問題となったが、この事件は同時に、水面下で行なわれている数多くの類似のケース・・・ >>続きを読む 2008年10月19日日経新聞 立岩真也『良い死』筑摩書房・2800円 この本のタイトルは「良い死」というのであるが、中身を読んでみても、良い死に方とはかくかくしかじかである、とは書いていない。そのかわりに
id:kawasakiさんからお声をかけていただき、遊びにいってきた。 ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) 作者: 梅田望夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/02/07メディア: 新書購入: 61人 クリック: 996回この商品を含むブログ (2353件) を見る 本を事前に送っていただいた。すらーっと読めた。 Web2.0とかなんだかんだ方向性としてしか存在していない漠然とした印象を、このわかりやすさにまとめるの大変だよなぁ。というくらいきちんと整理されている。とりあえず自分の父親とかに読ませてみたくなったです。 イベントレポートというかログというかは下記ほか、著名ブロガーのみなさんがまとめてらっしゃる。 第一部 【梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」】ネット社会で既存メディアはどう変化するのか 第二部 【梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」
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