周りのみんながやっているから、乗り遅れないように私もやる――誰しも一度はこうした経験をしたことがあるのではないか。仲間外れは怖いものだ。多少ヘンな流行であっても、ついつい乗ってしまうのが人間の性である。 だが、そうして広まったブームも、時間が経つにつれて一つの風習・行事として根付く場合がある。「伝統」だなんて言葉がついていれば、説得力倍増だ。「古くから伝わるものなんだ、絶やしちゃいけない」という義務感すら覚えさせられる。 著者はここで疑問を抱く。その伝統、本当に古くからあるのか? だいたい「古くから」「昔から」とは一体いつごろのことなのか? いつからなら「伝統」と呼べるのか? 本書はそうしたモヤモヤを感じる日本の伝統の数々を検証する一冊である。著者は1979年に「星新一ショートショート・コンテスト」入賞を機に数多くのラジオ番組制作に関わってきた名放送作家。脚本家・作家としても活躍し、日本史