新海誠の3年ぶりの長編アニメ映画『すずめの戸締まり』が公開された。 公開初日からの3日間で、観客動員数133万1081人、興行収入18億8421万5620円を記録し、新海誠作品で最速という。 この映画は、デートムービーの外見を装い、見始めると息もつかせぬアクションの連続のエンタメ大作で、その背景には東日本大震災を忘却している日本と日本人への深い憤りがあり、震災孤児を主人公にした一種の「震災文学」であり、そして、少女が個人主義を確立していく成長物語でもあるという、何層もの構造になっている。 あの扉は「どこでもドア」なのか 新海誠の新作が『すずめの戸締まり』というタイトルで、2022年秋に公開されると発表されたのは2021年12月で、そのときに公開されたビジュアルは、青空の下、どこかの廃墟、地面は水に浸かっていて、そこに古ぼけた扉が佇んでいる、というものだった。人物は描かれていなかった。