答え合わせなんていらなかった。あの夏の宿題。 詩は読み物ではない。そこに答えはなく、謎もなく、事実もない。ただの文字の羅列が延々と見開きに横たわるだけであって、何かを学び取るようにもできていない。すなわちオレンジ踊るように僕らは文字の海をただようばかりなのだ。苦しみもなく、悲しみもなく、優しさも、力強さもない。ちょうど生まれたばかりの子鹿のように自然の鼓動に抗うことなく、リズムに乗って足をびくつかせる。 呼吸よ、目に見えぬ詩よ! 絶えず自分自身の存在のために 純粋に交換された世界空間。 リズムと共に私が私を成就していゆくための対重。 —『リルケ詩集』オルフォイスに寄せるソネット— (どこかラップ調。) ライナー・マリア・リルケは1875年にプラハで生まれた。幼いときに両親が離婚し、陸軍学校で寮生活を送るも病気を理由に退学。自宅で勉強し二十の時にプラハの大学へ入る。ルー・アンドレアス=サロメ