AI(人工知能)とロボットによるダンスで、観客に人間性を伝えることはできるのか。人間性とはいったい何なのか――。作家、長谷敏司(さとし)さんの『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(早川書房)は、そうした問いに正面から向き合うSF長編だ。2050年代の未来を舞台に、誰も見たことがないダンスの可能性を突き詰める。その先に見えたのは、生身の肉体と人生の重さだった。 物語は、コンテンポラリーダンスの気鋭として活躍が期待されていた主人公の護堂恒明(ごどうつねあき)が交通事故で右足を失い、絶望するところから始まる。彼は友人の提案でAI制御の義足を身につけ、ロボットと人間が共演する新たなダンスカンパニーの旗揚げに加わることで再起をはかろうとするが――。 執筆のきっかけは、16年に実際にあったダンス公演だった。「大橋可也(かくや)&ダンサーズ」とのコラボレーション企画で舞台にあわせて小説を書いたが、「どう