男性は、街にあふれるさまざまな音を聞き分けていました。コンビニの自動ドアの音、ラーメン屋のBGM。自動販売機の音まで。すべては生きるため。 覚えた一つ一つの音は、“耳印”として記憶に刻み込まれていました。しかしいま、耳印は消え、その場に立ち尽くすこともあるといいます。 (社会部記者 災害担当 飯田耕太) “耳印”の取材は、意外なところから始まりました。 揺れをとらえる、地震計です。 車のエンジンや人々の足音、工場の機械音…。社会生活に伴って出る音は、すべて振動として地中に伝わっていました。 地震を観測するうえでは妨げとなる「ノイズ」と呼ばれています。 東京を中心とする1都5県に整備されている観測網「MeSO-net(メソネット)」。約290もの地震計が記録した「ノイズ」が、コロナ禍の異変をあぶり出していたのです。