田中真紀子事件の波紋が広がっている。野党は更迭を求め、日経新聞も辞任を求めているが、問題を取り違えている。 これほどの混乱を引き起こしておいて、大臣の職にとどまるのはあまりにも無責任ではないか。来春開学予定の札幌保健医療大など3校の開設について田中真紀子文部科学相が審議会の答申を覆し、いったん不認可とした問題だ。 田中氏は「答申を覆した」のではなく、答申を受けて認可しなかったのだ。大学設置審議会の答申には法的拘束力がないので、彼女の決定は適法である。問題は、大臣が決裁すべき事項を決裁しただけでこれほどの大騒ぎになるまつりごとの構造である。彼女も指摘したように、認可を受ける前から大学の建物を建てるのはおかしい。今の大学設置認可の手続きは、大臣の決定を制度的に不可能にしているのだ。 経済学の教科書では、プリンシパル(依頼人)がエージェント(代理人)をコントロールできないことがエージェンシー問題