哲学者、思想家、倫理学者、武道家などいくつもの顔を持つ現代日本屈指の教養人・内田樹氏。混迷する今の時代にこそ「教養」で武装する必要があると説くそのワケは……。 「ブラック企業」での雇用条件のひどさがしばしば問題にされます。もちろん企業側が悪いのですが、気づかずにそういう企業に就職してしまう側にも責任の一端はあります。「怪しげな会社」というのはたとえ事業内容を知らなくても雰囲気でわかるものだからです。会社のドアを開けて、社員と一言言葉を交わしただけで、「ここはやばい」と感じて一目散に逃げ出すぐらいの感受性がないと世の中は渡れません。 「電車の中で化粧をする女性」もよく見かけます。これも問題なのは、そういう行為そのものが生きる力を衰えさせていることに彼女たち自身が気づいていないことです。彼女たちは周囲の刺すような視線を浴びてもまったく動じる気配がない。普通なら、あれだけ冷たいまなざしで周囲から