【このコラムのPDF版はこちら】 人手不足にもかかわらず賃金がなぜ上がらないのかに関心が集まっている。アベノミクスに対して、資産価格は上がっているものの、賃金は上がっておらず、成果を享受しているのは一部のものに限られているという批判があり、賃金が上がらない理由を考えることは、そのような批判が正当なものかどうかを考えるうえで重要な要素である。 このように大切な要素であるにもかかわらず、現下の人手不足のもとでなぜ賃金が上がらないのかはよくわかっていない。多くの仮説が提案されている一方で、どの仮説が正しいかについては十分に明らかになっていないのである(玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』を参照)。幾多ある仮説の中で筆者が有力と考えている仮説が、労働者の構成変化によって、統計上賃金が上がっていないようにみえるという仮説である。この仮説は、景気拡大局面において就業者が増えたときに、新