毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、大西礼芳さん。 (取材・文=松井美緒 写真=干川 修) 大西さんにとって、宮本輝は運命の作家だった。子どもの頃から本が嫌いで、大人になってもなかなか読めた例がなかった。でも映画『幻の光』を観て、宮本輝の原作小説を手に取ると、すっと心に入ってきた。 「宮本さんの作品は、言葉と土地が結びついているからかもしれません」 私も三重出身でまだ関西弁が抜けませんが……と大西さんは続ける。 「『泥の河』なら大阪の、『螢川』なら富山の言葉が色鮮やかに響いてきます。そしてその言葉を発している主人公・二人の少年の心情が、景色とリンクしている。少年の心が動けば、川が流れて螢が飛びます。少年の心情が美しく、何というか雄大に私の心に届くんです。その土地で生きている人間の物語である