京都市街地の中心部、新京極通と三条通が交差する地点に、高さ約1・5メートル、長さ約15メートルの坂道が出現する。手ぬぐいを扱う老舗「永楽屋」のすぐ隣、観光客でにぎわう新京極通に突如として現れるこの短い坂道は、通称「たらたら坂」といってちょっとした有名どころにもなっている。京都観光の折には通ったことのある人もきっと多いだろう。しかし、なぜこんなところに坂道があるのだろうか。 近年注目される分野に、「ジオアーケオロジー」がある。直訳すれば「地学にもとづく考古学」だろうか。発掘調査で得られる地質的な情報から、地形の変遷を考える分野である。 これまで凸凹(でこぼこ)地形などの地形の解釈は、短くても千年、一般的には1万年以上の尺度でなされてきた。だがこのような尺度は、地面の微妙な凸凹を理解するにはややスケールが大きすぎる。加えて、人びとの歴史が生んだ地形を理解するには、文字通りヒューマンスケールの尺