タグ

ブックマーク / martinguerre.hatenablog.com (8)

  • トンチャイ・ウィニッチャクン『地図がつくったタイー国民国家誕生の歴史ー』 - 肉離れ

    1983年に相次いで出版されたナショナリズム論の新古典、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』とアーネスト・ゲルナー『ネーションとナショナリズム』は、現在もなお構成主義的ナショナリズム論の典拠としてその位置を占めている。構成主義的ナショナリズム論とは、社会構成主義(social constructionism)の立場から展開されるナショナリズム論である。社会構成主義とは、私たちが、質的で、非歴史的であり普遍的であると思っていた概念が、じつは社会的な言説や実践によって構成されたものであると考え、それがいかなる歴史、環境、社会的条件によって成立したかを分析対象とする学問的立場である。 ジェンダー、セクシュアリティ研究を例にあげればわかりやすいだろう。社会構成主義以前のジェンダー論では、生物学的性(sex)と社会的性(gender)の違いは所与のものとされ、女性運動は市民権の付与や無償労働

    トンチャイ・ウィニッチャクン『地図がつくったタイー国民国家誕生の歴史ー』 - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2012/12/25
  • 松本克己『世界言語のなかの日本語―日本語系統論の新たな地平』 - 肉離れ

    世界言語のなかの日語―日語系統論の新たな地平 作者: 松克己出版社/メーカー: 三省堂発売日: 2007/11/01メディア: 単行購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (11件) を見る 日語はどこから来たのか。日文化の発祥や民族の起源はどこに遡るのか。日の始原をめぐるこの問は、歴史学や言語学はもちろんのこと、あらゆる人文科学、社会科学にとって避けては通れない問題である。俎上に載せられて百年近く、数多くの仮説が提示され検証が行われてきたにもかかわらず、一向に解決に達していないこの問題に対して、書は極めて大胆な仮説を投げかける。 言語や文化の起源を求めることは、場合によっては特定文化の「国籍」を求めることと同一視されやすい。たとえば「天皇家の先祖は朝鮮人であるか」などが好例だろう。しかし、文化の国籍特定するという行為が、ある事象を国民国家の枠組みに帰属させる

    松本克己『世界言語のなかの日本語―日本語系統論の新たな地平』 - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2012/10/17
    日本語系統分析の新たな仮説。
  • 安田浩一『ネットと愛国』ー排外主義者の笑いのセンス(1) - 肉離れ

    在日コリアンに差別的なスローガンを浴びせかけ、過激な行動を繰り返す在特会(在日特権を許さない市民の会)。近年、インターネットで一気にその名を知られ、急速に勢力を拡大した排外主義的ナショナリストの集団である。書は、ジャーナリストの安田浩一が『G2』にて二回にわたり掲載した詳細なルポに大幅な加筆修正を加えて、彼らの実像に接近した渾身の著作だ。そこで浮かび上がるのは孤独で臆病な若者の屈した心情である。安田がインタビューする在特会の会員は、さまざまな理由で社会の中で「うまくいかない人たち」が多い。彼らは、「出てこいチョンコ!」「ゴキブリ朝鮮人を日人から追い出せ!」といった差別的な言葉を吐き続けることで、みずからのアイデンティティーを確認する。安田がをすり減らした成果である書には、機会を改めて正面から応える必要があるだろう。今回は、在特会そのものではないが、最近の若年ナショナリストの政治

    安田浩一『ネットと愛国』ー排外主義者の笑いのセンス(1) - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2012/06/05
  • 大竹文雄『競争と公平感 市場経済の本当のメリット』 - 肉離れ

    書は、初学者用の経済学テキストや、『経済学的思考のセンス』など良質の入門書を数多く記してきた大竹文雄による一冊である。「週刊ダイヤモンド」の2010年のベスト経済書ランキング第1位、2011年新書大賞第4位など、評判も上々らしい。その内容は、仕事事などの生活にまつわるミクロな問題から、非正規雇用問題、最低賃金や外国人労働者などのマクロな問題まで、経済学の基礎的知識を参照しながらケーススタディーすることで、経済学という学問分野がどのような思考に基づいて成立しているのか解説するもので、初学者でも理解しやすいように書かれている。風が吹けば桶屋が儲かる方式で思考する経済学的センスを養うには良書だろう。各論ばかりで、議論が深まらないのは残念なところだが、入門書にそのような注文はないものねだりというものだ。 しかし今回述べたいのは、こうした表面的感想ではない。わたしの記憶する限り、書のような経

    大竹文雄『競争と公平感 市場経済の本当のメリット』 - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2012/06/04
  • 安田浩一『ネットと愛国』ー排外主義者の笑いのセンス(2) - 肉離れ

    (承前) さて、わたしが最初に問題にしたのは、排害社会員と市民の間の笑いに関する断絶、ズレであった。なぜ排害社会員が笑った「ネタ」を、市民は笑わないどころか、目を逸らしてまるで聞こえていないように振舞ったのか。答えは単純だ。市民の側に笑いの前提となる構図が内属していないためである。市民の多くは、「良きシナ人」の存在を経験的に知っているし、そもそも人の良し悪しに人種や国籍が関係ないことを(程度の差こそあれ)知っている。たとえアイロニーであったとしても、UFO、ツチノコと並べてまでその希少性を比較するという発想そのものがないのだ。排害社会員には自明の前提として内属する構図が市民には存在しない。 前提条件となる構図が、一部の人びとにしか共有されていないにも関わらず、転倒によって笑わせることができると確信し、行動に移したとき、これを「内輪ネタ」という。金友のジョークは、排害社の会員だけが理解できる

    安田浩一『ネットと愛国』ー排外主義者の笑いのセンス(2) - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2012/06/04
    重要な知見。政治的発言の吃音化。概念への逃走。政治的空間にいるものならば、左右同時に発生する問題。コピペ文化はある種吃音の対応策としてあるのではないか。
  • DQNネーム批判にみる「エセ教養主義」的言語観 - 肉離れ

    読みづらい名前や、常識的に考えがたい言葉を使用した名前、いわゆるDQN(ドキュン)ネームに対する批判の主な論拠は以下のようなものだろう。1.表記と読みの乖離、2.それに伴う実生活での困難(読めない、いじめ等)、3.そのような事態を予期せず名付ける親のエゴイズム、4.アニメキャラなどをそのまま命名することに感じる軽薄さ。こうしたDQNネームは、最近の世論(とりわけネット上の)では極めて評判が悪く、掲示板やブログ、動画サイトなどでは、漢字表記からはとても想像できないような読みを、驚きや怒りをもって共有するケースが散見される。しかし、ネットを席捲するDQNネーム批判の背後に見え隠れする、日語に対するある固着した偏見には疑問を抱かずにはいられない。稿ではこの問題への違和感をきっかけにして、先の整理における問題1.日語における表記と読み(音声)の乖離、さらには音と訓の関係について考えよう。 D

    DQNネーム批判にみる「エセ教養主義」的言語観 - 肉離れ
  • 冬季オリンピックと雪なしオリンピックー多文化主義の論理的陥穽 - 肉離れ

    著名な国際政治経済学者ポール・ケネディが、2010年3月のトリビューン・メディア・サービスのコラムにて興味深い提案を行っている。「なぜ雪国だけに楽しませておくのか」と題されたコラムでケネディは、冬季オリンピックを例に挙げ、文化論的批判を展開する。 冬季オリンピックは言うまでもなく、ウィンタースポーツを中心として成績を競う国際大会であり、その性質上、雪国に圧倒的有利になっている。2010年に開催されたバンクーバーオリンピックでは、獲得メダル数の最上位は、アメリカ、カナダ、ドイツ、ノルウェーであり、いずれも国内に豪雪地帯を有する雪国である。その一方、カナダとアメリカを除けば、北米も、中米も、南米も、ただのひとつもメダルを獲得できなかった。アフリカや中東、南アジア、東南アジア、太平洋地域も同様である。彼らの成績にここまで大きな差がついた理由はあまりにも明確である。雪が降るか、降らないか。これだけ

    冬季オリンピックと雪なしオリンピックー多文化主義の論理的陥穽 - 肉離れ
    lotus3000
    lotus3000 2011/08/24
  • 高岡蒼甫の件について(1)窪塚洋介と自分探しのナショナリズム - 肉離れ

    ここ数日、インターネット上で高岡蒼甫が話題になっている。韓国ドラマやK-POPなどの韓流コンテンツを数多く放送するフジテレビを批判する発言をインターネット上に書き込み、それが理由で所属事務所を解雇されたというのだ。高岡は自身のTwitterに 「正直、お世話になった事も多々あるけど8(フジテレビ)は今マジで見ない。韓国のTV局かと思う事もしばしば。しーばしーば。うちら日人は日の伝統番組求めてますけど。取り合えず韓国ネタ出て来たら消してます^^」(7月23日 参照)(括弧内記述は筆者) と投稿。さらに「ここは一体どこの国だよって感じ、気持ち悪い」と不満を表明したという。 今回は高岡の発言や行為の是非、それらで話題となっている韓流ブーム、フジテレビの資や番組編成に関する経済学や力学、ネット上の反応を扱わない。高岡に先立ってナショナリスティックな言説を繰り返し発言していたもう一人の人物と比

    高岡蒼甫の件について(1)窪塚洋介と自分探しのナショナリズム - 肉離れ
  • 1