RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)の電子顕微鏡写真。抗RSウイルスFタンパク質抗体(黄色)で標識したウイルス粒子(青色)が、ヒトの肺細胞の表面からはがれる様子。2022年は米国でRSウイルスが例年になく早い時期から流行している。(PHOTOGRAPH BY NIAID) ここ数週間、全米の小児科で、呼吸困難に陥って酸素療法が必要になる患者が急増し、病床が逼迫しはじめている。今年の場合、原因は新型コロナウイルスではなく、RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)だ。 RSウイルスは新たな病原体ではない。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の推定によると、毎年、世界で6400万人がRSウイルスに感染し、16万人が死亡している。なかでも65歳以上の高齢者や乳幼児は入院や死に至るリスクが高く、2022年5月19日付けで医学誌「The Lancet」に発表された研究では、5歳未満の子どもの犠牲者は